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内容説明
「激しさと穏やかさが、さも当然といった風に共存する山の姿を垣間見て、私は心の殻がはがれて、それがむき出しになるような戦慄(おののき)を感じていた。川の流ればかりではない。ここでは、魚も獣も人も、死と背中合わせに生きている。ちょっとした油断、そして恐らくは抗いようのない偶然が、それらの生を死へとすり替えてしまうのだ。」(本文より)
濃霧の中の山越え、沢を走る鉄砲水の恐怖、掴み取りできるほど大量のイワナ、一日で百匹を超すヤマベ釣り、暗闇にひそむヘビ・タカ・ヒグマ、目の前で宙を飛び滝壺に消えていった巨大イワナの勇姿――かつて北の奥地にあった圧倒的な自然を描き、「喰う・喰われる」の掟に従ってひしめきあう生命に心が震える。
解説/服部文祥
■内容
1 母なる川よ
染退川へ/無言の教え/行く人、来る人/自然の戦い/ふたたび東の川へ/鱒の群れ/大きなヤマベ/ペンケホカイ/大水/迷い人
2 奥地へ
悪夢/三叉へ/岩上の危機/濃霧の山越え
3 燃ゆる渓
他流試合/巨大魚/渓流に帰る/雨の徳富川/黄金川
解説 服部文祥
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
マリリン
29
タイトルを超え、自然が自然であった時代がリアルに伝わってくる。昭和初期の話だが当時の10代が大人びて感じる。空や空気やなど周囲を感じ、大人と行動を共にし自然の中で生きる術を身につけ単独でも行動できるようになる。釣りの話はこんな時代もあったのだと感動できるし、登場するヒグマやコウモリ、フクロウや犬もウマも人間とうまく共存している感がある。愛玩ではない犬たちの世界は、ジャック・ロンドンの作品を彷彿させるが、さらに魅力的に感じる。魚もただ獲るだけではなく、時には時間を割き救い出す姿に自然への敬意を感じた。2026/02/16
Shoji
28
北海道の秘境での渓流釣の紀行物語です。時代は昭和、しかも戦前。今では想像もつかないレベルの大自然の中で、小屋掛けをして釣りをする。水面が曲面を作って盛り上がる程の魚影の濃さだ。その脇では熊が一心に魚を食らう。釣れる魚の数も大きさも考えられないスケールだ。自然の摂理の中では人間の経済活動なんて、ちっぽけなものだとさえ思えた。自然観を考えるうえで教科書になりそうな一冊でした。2025/04/15
pman
3
私も少しばかり渓流釣りをするので、約100年前の北海道の山や川の話はとても興味深く、非常に楽しめた 雨が降れば地形が変わるほど荒れ狂う川や、大自然そのままの山岳渓流は、護岸工事やダム建設で安定している今の川とは比べ物にならないほど危険であり、その分生態系はとても豊かである その山の中で今では考えられない数のヤマメを釣ったり、川が埋まり手掴みできるほどのマスが入ってきたりと、魚影の濃さに驚き、今野さんや清水さんの身のこなし、ヒグマやシカ、樹木に至る山の知識に感激し、終始学びの本だった2025/08/15
読書熊
3
かつて北海道にあった荒々しい自然2025/04/23
gogoolump
2
久々に読んだ小説。ダムや道路の建設がまだ行われていない原始の川が残っている昭和初期の話。ヤマベが数百、イワナの50センチ超え、アメマスとバンバン釣れる。今北海道の川は殆どニジマスという印象だがこんな時もあったんだと思った。 それにしても文書が読み易くて上手い。殆ど小説を書いた事がない方だが天性の才能を感じる。2026/01/08
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