内容説明
感染症の拡大を背景に周囲の病院の救急態勢が崩壊する中、青年医師・公河が働く病院は「誰の命も見捨てない」を院是に患者を受け入れ続ける。長時間の連続勤務による極度の疲労で、死と狂気が常に隣り合わせの日々。我々の命だけは見捨てられるのか――芥川賞受賞の気鋭が医師としての経験を元に描いた、受賞後初の単行本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
158
全ての医療現場がこうだとは思いたくはない。が、限りなく近い現状があるのだろう。ブラックもブラック、これじゃあ壊れちゃうよ。朝比奈さんに凄いのを読まされちゃった。何処まで行っても凄いのだ。永遠に続くと思われる闇だ!沼か・・「見捨てたのは誰?」病院の理念は素晴らしいけれど本末転倒にならないか?医師は機械ではない、人間なのだ。そして、その現場の一端を私たち患者やその家族はどこまで知っているだろう・・2025/06/04
hiace9000
136
これまで多く読んだ医療小説の中で最も苛烈な医療現場を、おそらく最も実態に近い高い再現性で描いた作品ではなかろうか。医療現場における医師の過酷な過重労働、人を救うために過労死すらスルーされてしまう救命現場の相克に晒される―まさに地獄図は、読みながら内臓がせり上がってくるような苦しさ。「誰の命も見捨てない」という言葉の放つ畏敬と戦慄、それに被さってくる重い疲労感。すべての人間を救おうとするのは聖者か狂人か。それとも他人の命を救うために死んでいく戦地に赴く軍人か。魂の叫びは祈りとならず。これは衝撃の一作である。2025/05/18
シナモン
115
壮絶だった。読み進めるのが辛くなる。毎日ギリギリの綱渡りでなんとか保たれてる救急医療。そこに携わる医師たちのあまりにも過酷な現実。患者の命と医師の命。医師への尊敬の念を新たにする一冊だった。2025/04/16
ナミのママ
98
同期の女医が過労死したところから始まりブラックすぎる医師の日常が書かれている。近隣の病院が救急を受け入れなくなり、患者がどんどん回されてくる。同僚の医師は辞めていく。「誰の命も見捨てない」を看板にあげる病院は、働く医師の命には冷たい。底辺のブラック企業で働く人と違い、主人公は手に職があり転職も可能だが辞めない、自らを虐めるように心身共に疲弊していく。患者を背負っていたら自害もできないと語る同僚との会話。極限を超えた時に人の肉体は、精神はどうなるのか。ひたすら内に内に向かう文体に恐ろしさを感じて読み終えた。2025/04/09
ケンイチミズバ
91
経営難や人手不足、そこに働き方改革までくれば夜間の救急外来の受け入れ廃止、産婦人科も廃止する病院が出て来る。そうなるよねで救急車は全て信念を曲げない総合病院が受け入れる。無理がさざ波のように押し寄せ、波なら押したら一度引くが押し寄せるばかり。非難されようがある程度のサービスを捨てることで成される働き方改革の矛盾。それが病院ならば、命の選別もアリな社会の到来、衰退とも受け取れる。どんな組織も同じ。誰かの負担軽減は誰かの負担増によってもたらされることの方が多い。責任感や職業意識の高い者は心身ともに壊れる。2025/05/15
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