内容説明
「美は避けなければならない」。
美しさは、結果ではあっても出発点ではないのだから。
──本文より
1979年、日本の現代音楽の作曲と聴取に革新をもたらした記念碑的名著、待望の復刊!
十二音音楽、総音列音楽、音群的音楽などを「イディオレクト(個人言語)」として退け、「線の音楽」へと歩を進めた作曲家の処女音楽論。
聴き手の聴覚的なグルーピング作業に支えられる、どこまでも持続する一本の音の列なり。
その持続的な列なりの譬喩として、この音楽を『線の音楽』と呼ぶことにした──(本文より)
1979年、「エピステーメー叢書」(朝日出版社)の1冊として刊行され、当時の現代音楽界に多大なインパクトをあたえた本書は、その後世界的作曲家へと飛躍することになる著者の音楽思想の原点であり、最新音楽論『聴く人(homo audiens)』にまでつながる思考の根幹を明らかにしている。
ジョン・ケージ、モートン・フェルドマンにつらなる現代音楽の潮流を理解するうえでも、「とりわけ重要な本」(批評家・佐々木敦氏)と評価される記念碑的名著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
52
アルバム『線の音楽』(LP・1974年)に収録された、演奏時間約9分の「オリエント・オリエンテイション」、その他の曲は、何でもない室内楽に聞こえるが、実は本書を読むと、その思索・方法論は、音・音楽について、まさに基礎に立ち戻って構築していったことがわかる。無音の「4分33秒」(ケージ)、1音の「夢の家」(ヤング)など、極端な実験音楽の意味をふりかえり、作曲という、音(音以前の段階も)への関与自体さえも再検討した結果であった。そのため、通常の音楽論に登場しそうな用語が、ほとんど出てこない異色の音楽論である。2019/12/21
へくとぱすかる
51
前回読んだときには、「グルーピング」「音楽的時間」などの用語の重要性に、あまり気を留めていなかったように思える。音楽の成り立つ前提・既成条件を徹底して見直し、方向性を再構築しようとした試みが、著者の場合は「線の音楽」であるということ。あれは聴き手の方が「グルーピング」をする音楽であった(聴き直してみよう)。調性や和音の「解決」などのルールがなくても音楽は成り立ち、ジョン・ケージのように、作曲家が音のコントロールをしない音楽すらありうる。そこに行きつくまでの音楽史的な思考過程は、こんなに必然性があったのか。2023/06/11
さえきかずひこ
9
短くも緻密な論考と、清冽なポエジーを湛えた随想(というか対話)が収録されており、とても刺激を受けた。なにより素晴らしいのは、音楽というか、この世界に開かれている感じをもたらす文章のセンスである。決してえらぶっていないが、それが該博な知識と深い洞察による認識によって支えられていることもびんびんと感じ取られた。2014/12/30
横丁の隠居
3
元の記事がエピステーメーに不定期連載されたのが1977年からだそうで、1979年に単行本として出た。この難しい(私には)本が2014年に復刊されるというのはすごいですね。またもや哲学の時代がやってきたのだろうか。2019/07/16
tajidanslemetro
1
氏の作曲へのスタンスが丁寧な論理建てでよく理解できた。2021/03/11
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