内容説明
あのベストセラー、待望の文庫化!
「不倫」という言葉を寄せつけないほど二人は正しく高潔であった。
これは、本当にあった「奇跡」の愛の物語。
「真実を語ることは、これまでずっと封印してきました――」
男は世界的な写真家。
女は梨園の妻で、母親だった。
「不倫」という言葉を寄せつけないほど正しく高潔な二人。
これはまさしく「奇跡」なのである。
作家の私は、博子から託された奇跡の物語を綴ってゆく。
著者の三十八年ぶり書下ろし小説が文庫化。
〈田原桂一君へ
君が再婚したことには驚かへんけど、まさか君が梨園の妻の博子さんと「出会ってしまった」という運命的な言葉の背後にしか生きられへんと悟ったことが「奇跡」やったんか。(略)
君のあの人懐っこい微笑が、まさか死の悲しみを内包しとったんかということは知るよしもなかった。博子さんは君から生の歓びと同時に死の悲しみを贈られて、君は一人旅立った。因果な歌舞伎の前世物語みたいで、不憫でならない。〉
――横尾忠則(「朝日新聞」2022年4月9日付)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mariann
16
この薄さだからエッセイだと思って手に取ったら実在する人物の愛の軌跡、ドキュメンタリーだった。勉強不足で、この2人に対する知識はなかったが、林さんの読みやすいタッチでサクサクと読了。不倫だけど美談。このか書かれ方だと夫の孝太郎氏に非があるように見えるよなーって思ったりしたけど、実際離婚と同時に再婚を発表する強者なのでその通りなのかもしれない。博子氏のパワーに脱帽するけど、田原氏の死を考えると思うところはある。日本は逸材を失ってしまったのだろう。2025/04/21
ゆう
9
癌になってからの献身的な看護、二人の絆の強さに、やはり運命的に結ばれていたんだなとは思う。 でも不倫している時に息子を連れて行くのはどうなんだと思ってしまう。素直で良い息子だったから懐いて、結果的には良かったけど、普通はこんな関係にはなかなかなれない。お父さんの存在感がまるでなく、女遊びしている事しか書かれてないけど、そこもちょっとは書いてほしかった。不倫と言う言葉を寄せ付けないほど正しく高潔な二人とあったけど、読んでみたら普通の不倫だった。高潔と言うからプラトニックラブかと思ったら全然違った2025/04/04
Himiko
7
芸術家と歌舞伎役者に嫁いだ女性の運命の恋、実話であるのもすごい。ドキュメンタリーを見た気分の一冊。いつか映画とかになるのかもしれない内容。2025/03/30
チョコミント
2
歌舞伎役者の妻の恋。こんな事実があったんだなぁと驚きました。作中にも描かれていましたが、外部に漏れていたらスキャンダルになっていただろうに、そうならなかったのは懸命に家業を博子さんが守ってきたからなんだろうと思いました。物語としては、時系列や視点がバラバラで読みにくかったです。2025/05/14
エフ
1
奇跡。美しい物語。2025/04/20