ちくま新書<br> 日本の国民皆保険

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ちくま新書
日本の国民皆保険

  • 著者名:島崎謙治【著者】
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 筑摩書房(2025/02発売)
  • ポイント 10pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076724

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内容説明

わが国は一九六一年に国民皆保険を実現し、高度経済成長が終わる七三年まで給付の拡充を図った。しかし、社会経済が右肩下がりになれば、国民皆保険が形骸化するおそれがある。この危機を乗り越える鍵は歴史の中にある。社会保険方式、被用者保険と国民健康保険の二本建て、独立型の後期高齢者医療制度という日本独自の仕組みは、なぜ、どのように生まれたのか。基本に立ち返ることで、真に守るべきものが見えてくる。医療政策の第一人者が、国民皆保険の構造と軌跡を明らかにし今後の展望を描く。

目次

プロローグ/I部 構造/第1章 日本の医療制度の特徴と概要/1 医療制度の特質と国民皆保険の射程/2 医療制度の国際比較/3 日本の医療財政制度の概要/4 日本の医療提供制度の概要/第2章 日本の国民皆保険の要諦/1 職域保険(被用者保険)と地域保険(国民健康保険)の二本建て/2 デリバリー(医療提供)とファイナンス(医療財政)との結合/第3章 制度設計をめぐる論点と分析方法/1 国民皆保険の制度設計をめぐる重要論点/2 分析方法──経路依存性/II部 軌跡/第4章 基盤形成期/1 健保法の制定と発展/2 国民健康保険法の制定と普及/3 医療の実施組織と診療報酬の支払方法/第5章 確立・拡充期/1 医療保険制度の再建/2 国民皆保険の構想と実現/3 国民皆保険後の保険給付および医療提供体制の拡充/第6章 見直し・改革期/1 老人保健制度および退職者医療制度の創設/2 医療提供制度の改革と介護保険制度の創設/3 バブル経済の崩壊と医療保険制度改革/4 社会保障・税一体改革および全世代型社会保障改革/第7章 軌跡をめぐる論点と考察/1 軌跡をめぐる論点/2 社会保険方式の意義と受容/3 被用者保険と国民健康保険の二本建ての国民皆保険/4 高齢者医療制度の制度設計/III部 展望/第8章 社会経済の変容と制約条件/1 社会経済と国民皆保険の関係/2 将来の人口構造の変容/3 2040年頃の社会保障の将来見通しと視点/第9章 医療提供制度をめぐる課題と改革/1 医療政策の理念/2 医療機関の機能分化と連携/3 医師の働き方改革/4 医療従事者の確保と偏在是正/5 地域医療構想の推進/6 地域特性に応じた取組み・実践事例/7 物価・賃金の上昇と診療報酬の対応/第10章 医療保険制度をめぐる課題と改革/1 被用者保険と国民健康保険の二本建ての体系の是非/2 働き方の多様化と被用者保険の適用拡大/3 被用者保険における被扶養者をめぐる政策課題/4 国民健康保険制度/5 高齢者医療制度/6 医療保険の財源論/7 混合診療解禁論の是非/エピローグ/あとがき/注/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

125
日本人に生まれてよかったと思える国民皆保険制度。それについて、これほどまでに充実した解説を読んだのは初めてだった。被用者保険と国民健康保険の二本建てとなった歴史的経緯、後期高齢者医療制度がそれらと独立に創設された意図、税方式でなく社会保険方式とした理由など、経緯や政策的意図にまで踏み込んだ見事な解説に圧倒される。著者は「国民皆保険は寄木細工のように微妙なバランスで成り立っている構造物である」と言うが、繊細な寄木細工を組上げてきた先人たちに感謝するとともに、この制度の今後の持続可能性を願うばかりである。2025/04/07

カピバラKS

48
●医療に貧富の格差を持ち込まないためには、「国民皆保険」を維持しなければならない。「国民皆保険」維持には、医療の高度化や高齢化により、国民の負担増が不可避である。とはいえ、国民は負担増に対し忌避感が非常に強い。では、これをどう乗り越えるのか。●それには、国民が給付と負担のあり方を自らの問題として捉える必要があるという。 ●なかなか厳しい指摘だが、世の中に「うまい話」は転がっていないのだ。負担は少ないが給付は多くなるという「うまい話」に惑わされないよう、心せねばなるまい。2025/07/23

よっち

26
生産年齢人口の減少、2040年問題、物価賃金の上昇、医師の偏在といった問題に直面する日本。国民皆保険の構造と軌跡を明らかにし今後の展望を語る1冊。社会保険方式、被用者保険と国民健康保険の二本建て、独立型の後期高齢者医療制度という日本独自の仕組みは、なぜ、どのように生まれたのか。その特徴を他国の制度とも比較しながら、制度設計をめぐる論点、どのようにして今の形になり、拡充され見直されてきたのかを解説しながら、現状を踏まえて2040年頃はどうなるのか、今後に向けた課題も整理していて充実した内容になっていました。2025/03/11

Francis

18
著者は元厚生労働省保険局保険課長。いわば国民皆保険のプロフェッショナル。1922年に制定された健康保険法からはじまり、1961年に国民皆年金とともに実現した国民皆保険の歴史と現状、そしてこれからを理解するのに最良の本。2009年に政権に就いた旧民主党が「後期高齢者医療制度」の廃止を主張していた事が書かれている。民主党は「今の年金制度は破綻するから抜本改革を!」とも主張してました。結局二つとも実現しなかった。しなくて良かったです。医療保険・年金保険は多くの人の生活・利害が絡むので抜本改革は無理なのです。2025/05/28

のら

6
皆保険の理念、制度の仕組みや変遷、今後の課題などを網羅的に概観。新書ではあるが内容的には教科書に近い印象を受けた。あとがきでもやや難解と著者自ら評している。初学者向けというよりも、ある程度の知識を持っている方向け。そうした方が知識のアップデートに活用すると良いかもしれない。2025/03/10

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