ちくま新書<br> 貧困とは何か ――「健康で文化的な最低限度の生活」という難問

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ちくま新書
貧困とは何か ――「健康で文化的な最低限度の生活」という難問

  • 著者名:志賀信夫【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2025/02発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076694

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内容説明

貧困とは「お金がないこと」だと思っている人は多い。では生きていくための最低限のお金さえあれば貧困ではないのか? 貧困の定義は実は時代ごとに課題にぶつかり、形を変えてきた。貧困層を劣った人間と見なす優生思想、男女差別を前提とした家族主義、子どもを救うに値する/しないに選別する投資の論理、貧困を努力の問題に還元する自己責任論……。気鋭の研究者が、「貧困」概念をめぐる議論と問題点を整理し、「貧困」が今もなくならないのはなぜかという根本的な問いに対峙する。

目次

はじめに──「健康で文化的な最低限度の生活」から考え始める/貧困とは何か? /いのちのとりで裁判/「健康で文化的な最低限度の生活」/本書の構成/序章 貧困とは何か? /映画『MINAMATA』と貧困/「貧困線」の危険性/貧困とは具体的にどういうものか? /貧困の概念は社会とともに変わる/貧困が存在しない社会とは/「貧困=あってはならない生活状態」/貧困はいつ生まれたのか? /第1章 生きていければ「貧困」じゃない? ──絶対的貧困理論/貧困理論が生まれた社会的背景/資本家と労働運動/暴動が起こらない最低ライン/「食べられるか否か」という貧困線/個人の生活への介入/「真の労働者」とは誰か? /批判されるべきブースの理論/「階級」と「階層」/地方都市での貧困調査/栄養と貧困/肉体的生存と社会的生存/「何とか食べていける」人は貧困か? /空腹を満たすこと、栄養を充たすこと/食事とは社会参加でもある/第2章 家族主義を乗り越えるために──相対的貧困理論/「相対的貧困理論」の誕生/貧困と社会参加/「男性として」「女性として」の差別性/概念拡大の社会的背景/「社会正義」の成立/「貧困消滅論」対「新しい貧困」/労働者階級と労働党政権/戦時下での激しい労働運動/社会保障制度の充実と経済成長/「近代家族主義」という限界/サザエさんの「近代家族主義」を乗り越えるために/「貧困とはお金がないこと」は正しいか? /貨幣はなぜ権力を持つのか? /第3章 ベーシック・サービス、コモン、社会的共通資本──社会的排除理論/「貧困」概念のさらなる拡大/「社会的排除」とは/社会的排除概念の特徴/自由が制限されるのはどういう状況か? /差別とは何か? /二つの差別/「社会的排除」概念の定義と補足/「社会的排除」概念に対する否定的な評価/「社会的排除」批判への再批判/ベーシック・サービスへと至る道/ベーシック・サービス、社会的共通資本、コモン/資本主義批判か、新自由主義批判か/第4章 「子どもの貧困」に潜む罠──「投資」と「選別」を批判する/貧困観の貧困/「子どもの貧困」と自己責任論/「子どもの貧困」と家族主義/投資に値する人間、値しない人間/投資アプローチと競争の激化/子どもの「権利」を考える/権利アプローチにおける「人間モデル」と「参加」/第5章 「貧困」は自分のせいなのか? ──「階級」から問い直す/「既にある貧困への対策」と「貧困そのものの根絶」/「階層」から貧困を考える/「階級」から貧困を考える/当たり前過ぎて意識されない「階級」/所有することのできない状態とは何か? /生産は資本のためか、社会のためか/資本主義の起源にある暴力/「貧困は他人事ではない」の本当の意味/幸せを願うほど貧困になる社会/「貧乏」と「貧困」はどう違うのか? /「昔はみんな貧乏だった」は何を意味しているのか? /下への競争/就労支援と再分配/「貧困の原因は本人にある」という自己責任論/社会的排除と貧困理論/終章 貧困のない社会はあり得るか? /「あってはならない状態」という意識の広がり/社会運動と「貧困」概念の拡大/社会の構造に目を向ける/逃げ出す、従わないという運動/脱出・不服従を実践する/「貧困のない社会」とは何か? /資本主義的な自由から真の自由へ/あとがき/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

けんとまん1007

53
言葉の意味をどう捉えるかは、かなり幅がある。その中で「貧困」という言葉もそうだ。そこからイメージするものは、かなり幅があるし、時間の流れと共に変わりうる。そのあたりを、歴史的な変遷も含め、整理されていて思考が落ち着く。「貧困」と「貧乏」の対比も興味深い。「健康で文化的な最低限度の生活」を考える時、ヒトは社会的な動物であるということを忘れてはいけない。ちょうど、地域の社会福祉に関わり始めていて、よいタイミングで出会えた1冊。ヒトの関係は双方向だと思っているし、何がしかの役割を持てることの大切さを考える。2025/05/02

山口透析鉄

25
冒頭に生活保護減額訴訟(片山さつき財務大臣も深く関わっていて敗訴が確定しているが謝罪等、今まで一切ないです)の件も出てきているのが印象的です。本が出た今年2月の時点では最高裁判決までは出ていませんでしたので。 日本国憲法第25条にも関わる貧困問題の概要がかなり分かりやすく、著者の立場で書かれています。 貧困問題が現代の資本主義社会の進展にあわせてどう表現されてきたのか、その歴史も紐解いています。まずは絶対的貧困とブースの取り上げた社会階級や優生思想(当時の英国では主流でした)の関係より。(以下はコメ欄)2025/10/26

よっち

25
貧困の定義は実は時代ごとに課題にぶつかり形を変えてきた。貧困をめぐる議論と問題点を整理し、今もなくならない理由に対峙する1冊。健康で文化的な最低限度の生活から考え始める貧困とは何か。絶対的貧困理論貧困理論が生まれた資本家と労働運動の社会的背景から、相対的貧困理論が生まれるまで、ベーシック・サービスやコモン、社会的共通資本といった概念から、子どもの貧困に潜む罠、貧困の自己責任論から社会的排除まで、貧困の歴史を丁寧に解説していて、やや文章が硬い感はありましたが、貧困の現状や政策を知る上で参考になる1冊でした。2025/03/06

sayan

24
本書は貧困と貧乏の混乱をまず整理する。そして貧困を語る力と選択肢を奪われた状態と定義。就職氷河期世代は非正規・低賃金のまま中年期を迎え再起の物語はない。著者の批判は役割遂行型支援に。決められた姿に従う者だけ支援する構造は藤田省三の皆苦しいから従え=一君万民的規範を想起。連帯は理念として魅力的な解決案。だが氷河期世代には他世代への複雑な感情、選択肢・自由・気力の不在。制度的再構築=連帯は必要も短期的な生活支援との両輪が無視できない。ふと、個別性と相互依存を前提とするワーカーズコレクティブ的実践が思い浮かぶ。2025/03/23

kayak-gohan

21
生活困窮者支援の仕事をしていると正面から向き合わなくてはいけないのが貧困の問題。でありながら、そもそも貧困とは何かを自分できちんと説明できていなかったのが本書を読んだきっかけ。本書では「貧困の基準=あってはならない生活水準」という考え方を提示し、貧困の捉え方が時代や環境によって相対的に変化するものであることを指摘している。それを出発点として、貧困概念が絶対的貧困→相対的貧困→社会的排除に進化していく過程を紹介していく。2025/07/03

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