内容説明
『性同一性障害はオモシロイ』で自らの体験を語り各書評で絶賛された著者が、大阪大学大学院での研究をもとに新しく書き下ろした本。最新の研究成果をもとに“性別”をめぐるさまざまな問題を目からウロコの納得分析。平易で初歩的な知識・問題の解説から始め、当事者たちへの調査を含めた当事者による性同一性障害の解説。
【主な目次】
巻頭エッセイ 太陽の塔は女か男か?! ――まえがきにかえて
第1部 社会現象としてのトランスジェンダー
はじめに
第1章 トランスジェンダーの現状
第2章 ジェンダー秩序・ジェンダー体制とトランスジェンダー
第3章 トランスジェンダーをめぐる言説と疑問
第4章 トランスジェンダーから見えてくるジェンダー
おわりに――まとめにかえて
参考文献リスト
第2部 学際的トランスジェンダー考
参考文献リスト
巻末エッセイ モリゾー・キッコロは女でも男でもなかった――あとがきにかえて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ともちゃん
3
性同一性障害の〜と銘打っているが、既存のジェンダー規範(男女二元論、異性愛主義)がいかに個々人の選択や常識を束縛しているかがよく分かる。勿論、GID当事者が向き合う様々な社会的障害についても幼児期から成年期、MtF、FtM、様々なケースで取上げている。巻末、障害者用トイレとノーマライゼーションの話ではないが、多様な性(人生)のあり方を認め、なりたい自分も、なれる自分(なれない部分)も許容できる社会ができれば、それは素敵な事だろう。然し、本書で問題提起された物に限っても、クリアしなければいけない課題は目眩が2014/01/27
ズマ
3
性別は自分で決定できるものではない。他人から見て男、女のどちらに見えるかで決まる。<性自認>は実は<性他認>なのである。という考えや、性同一性障害の“障害”は個人の方にあるのではなく、彼らを受け入れる社会のシステム障害なのだ、という考え。とても面白く読めた。ジェンダーと戦争の関連の考察も面白かった。“権力、所有、優越”といったものへの指向=“男らしさ”が戦争を招く。アメリカは一国まるごと“男らしさ”の病気にとりつかれている、という主張。ジェンダーは本当にあらゆる面で絡み付き、あらゆる問題に関わってくるのだ2012/02/06
バーニング
2
冒頭にも書かれているが著者が阪大の修士課程在学時に書いた文章や修論からの収録を含む一冊なので、20年近く前の文章が収録されている。いまこれを読むと、果たして20年経って社会の認識はどれほど変化があったのだろうと思うが、性同一性障害とトランスジェンダーの違いの解説だったり、「多様性」が重視される時代の中でどのような社会を具体的に目指すべきかと言った構想は今読んでも非常に参考になる。TERFに限らず多くの人が男/女の境界への強いこだわりを持っているが、その差異をラディカルに問い続けることはいつの時代も重要だ。2023/11/15
gtn
2
「男は男らしく、女は女らしく」という縛りさえなければ、性同一性障害は、単にこだわりが強いだけであって、障害ではないとの著者の視点は新鮮。社会の方がシステム障害を起こしているとの指摘に、目から鱗が落ちた。2019/01/19
歩く配慮事項さん
1
入門書としてオススメ。周囲に勧めたい。2012/06/29