内容説明
今、注目度が急速に高まっている荒井裕樹氏の対談集。障害者・ハンセン病者・精神病者の自己表現を研究する異色の近代文学研究者である。中島岳志(東京工業大学教授、政治学)、原一男(映画監督)、九龍ジョー(編集者、ライター)、川口有美子(ALS/MND サポートセンターさくら会副理事長)、尾上浩二(DPI日本会議副議長、元内閣府障害施策アドバイザー)という多彩な対談相手と共に、障害者運動、とりわけ「青い芝の会」が社会に与えた影響と、差別に抗う運動の根源的力のもつ解放感、今日的意義を語り合う。
【主な目次】
序「どうして君は、もっと怒らないの?」
第一話 運動はすぐそばにある――
本当に「障害者は自分の人生に関係ない」と言えるか 対談者・九龍ジョー
第二話 「善意」と闘うことは「悪意」と闘うことより難しい 対談者・尾上浩二
第三話 「いのち」を支える言葉たち 対談者・川口有美子
第四話 「映画」を通して「思想」は鍛えられた――「さようならCP」をめぐって 対談者・原一男、小林佐智子
第五話 「ポスト相模原事件」を生きる 対談者・中島岳志
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
60
【かつて、私たちが生きるこの国では、障害者たちが理不尽な差別に対して怒り、身体を張って闘ったことがありました。そうした障害者たちの闘いから、いま、私たちが生きていくために必要なことを学びたい】 あの相模原障害者殺傷事件以降、積極的にネット等で発言をしている、障害者・ハンセン病者・精神病者の自己表現を研究する著者による対談集。中島岳志、原一男、川口有美子、尾上浩二など多彩な対談相手と共に、障害者運動、特に「青い芝の会」が社会に与えた影響と、差別に抗う運動の根源的力のもつ解放感や、今日的意義を語り合う――。⇒2023/07/17
ネムル
13
相模原事件を受けて、かつての障害者運動に学び帰る対談集。運動の中心人物横田弘の怒りを「共生のための怒り」と称する点が深くささる。その一方で個人・家族・社会のなかで葛藤を抱え続けている点も大事だろう。例えば、横田弘は理想的な社会の青写真を描くことが出来なかったのではないか、あるいは昨今のヘイトを法規制でなく「文化力」で防ぎたいなど。『さようならCP』監督の原一男もどこかマチズモの幻想に囚われている気がするが、葛藤と反省を抱えながら対談しているのが印象深い。2020/10/01
kenitirokikuti
9
自分はカトリック系学校の出身なので、チャリティの方だ。汚濁に片手を突っ込むことはできるが、しかし、自分は落ちこぼれとはいえ、自分の尊厳を守るだけの能力は保有している。でも、親しい旧友が30過ぎで病気になって自力排便できなるくらいに衰弱してみじめに死んだので、重度障害者に「怒り」がいることは分かるよ▲収録対談のひとつは中島岳志とのもの。相模原事件とか秋葉原事件とか(「京アニ」事件は対談後なので扱ってないが)、メガ陰謀論の磁場について言っている。自分は「ビリーバー」だった過去があるので、個々人の精神障害と思う2020/01/05
ぼや
0
青い芝の会もその中心メンバーだった横田弘さんのことも全然知らなかった。荒井裕樹さんが対談の中で何回か、日本の障害者運動の歴史や思想的な蓄積が失われていくことを危惧している、とおっしゃってたけど、この本に出合えて良かった。何も知らない私のような人間にぴったりの入門編だと思う。今はとにかく波風を立てないようにしたがる世の中、しかも怒る側の人間が怒りの表現をユーモアを持って工夫することが称賛される世の中だと思う。この対談集から見えた横田弘さんはそうではなく、ただ怒ればいい、と言ってるように思う。2022/12/14
yoooko07
0
「行動要領」も「理想的な社会」を目指したテーゼなのではなく、「自分だって生きていていい」という実感をつかみ取るためのテーゼだった(p73)「健全者」的な価値観に「絶望」する。そうした価値観に合わせてなんて生きられない自分自身に「絶望」する。自分の価値を一度「ゼロ」にまで落としてしまう。(中略)そうすることで、自分自身のなかにある「健全者」的な価値観から解放されようとしたんじゃないか(p184)問いに対して明確な結論を出すのが「答える」なら、「問い」を引き受け続けるのが「応える」ではないか(p192)2021/05/22




