内容説明
悲劇の提督への哀悼の念を込めた画期的な評伝
撃墜死として美化された地上での死の淵で山本は何を思ったのか。
賊軍とされた長岡藩の出身、日本海海戦の経験を経て、海軍随一の国際派として対米戦回避を信念としながらも真珠湾攻撃の指揮をとった航空戦略の第一人者の人生の航跡。
山本の無念の心中に哀悼の念をこめて、山本の悲願であった「幻の講和内閣」による終戦の可能性を問う、昭和史研究の泰斗の山本五十六論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とさり
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昭和史研究の大家、保阪正康氏の書籍はこれまで数多く読んだが、どれも膨大な資料に当たり、数多くの関係者の証言に基づいた緻密でかつ冷静に真実に迫るものばかり。それらに比べるとこの本は氏の山本五十六に対する熱い思いが溢れすぎて、若干感情的過ぎないかと思うような箇所も見受けられ、少し違和感を覚えてしまった。日米開戦に際して彼我の力の差を冷静に分析し、なんとか武力衝突を回避しようと努めながら、一方で連合艦隊司令長官の職責に忠実にあろうとして願い叶わず生涯を終えたであろう彼の無念を晴らしたい一心からのものと思いたい。2025/03/17
Go Extreme
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生涯と思想: 国際派軍人 航空戦略の提唱 短期決戦・早期講和 ファシズム体制への距離 軍事戦略と戦争の転換点: 大艦巨砲主義 vs. 航空戦略 三国同盟の影響 真珠湾攻撃の意義 ミッドウェー海戦の敗北 撃墜事件の真相 政治的背景と軍部の対立: 陸軍と海軍の対立 講和派 vs. 強硬派 近衛文麿と吉田茂の動き 戦局への影響 講和への道と戦後の示唆: 幻の講和内閣 米英との接触試み 陸軍の戦争継続方針 山本の死による講和の頓挫 戦争の長期化と日本の運命: 連合国の反攻開始 日本の資源枯渇 戦後の歴史的評価2025/02/21