内容説明
『ちびっこカムのぼうけん』『くまの子ウーフ』『銀のほのおの国』など、多くの児童文学の傑作を生み出した神沢利子さんが、これまでの暮らしのなかで心に残った折々のことを書きとめたエッセイ集です。 父への思いを清冽なイメージで綴った「天の橇がゆく」をはじめ、神沢利子さんの珠玉のエッセイ11編に、宇野亜喜良さんの美しい絵が、魔法の息を吹きこみました。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉田あや
69
児童文学者、神沢利子さんの美しく仄寂しい言葉で紡がれるエッセイ集。藍色に澄んだ空に星ひとつ。それを受けるように浮かぶ白銀の透けるようなほそいほそい月の話が特に印象的だった。思わず伝えたくなり、まどみちおさんに電話した神沢さん。お二人の遣り取りと、その後神沢さんの元に届く、軽やかに口ずさむ詩のように綴られたまどさんのお礼のハガキが、その月の美しさを見事なまでに完璧なものにしてくれる。そして、日常を彩る聡明で温かな神沢さんの想像力に添えられる宇野亜喜良さんの挿絵が夢のように美しい。2017/06/02
akane_beach
8
童話作家神沢利子さんのエッセイ。1924生まれ90歳。もっとお若い方かと思っていた。幼少は樺太で過ごし、その体験を日常のふとしたことで思い出し、幻を見、想像力を拡げ選ばれた日本語に置き換える感性と手腕はもう見事。宇野亜喜のクールで美しい絵との素晴らしいコラボ。樺太の厳しくも美しい自然が目に浮かぶ。行ってみたい。戦時中に成人を迎えた氏は身近な人との別れも経験している。氏は現在は井の頭公園が散歩コースのよう。何かのミステリ小説の殺人現場じゃなかったかな。東京を知らない私にはちょっと物騒なイメージ。2014/12/16