内容説明
コロナウィルス感染拡大のなか、小説家のヤマネは、『実践講座・身近な場所を表現する/地図と映像を手がかりに』という講座を担当することになる。
PCを通して語られるそれぞれの記憶、忘れられない風景、そこから生まれる言葉……。
PC越しに誰かの記憶が、住む場所も年齢もばらばらな人たちの別の新たな記憶を呼び覚まし、ゆるやかにつながりあってゆく。
読売新聞夕刊連載小説、待望の単行本化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
162
読んでいるというよりは、ある。そこにあるものを見ている。作中に、富士山は見えるとか見えないとかいうよりは、あるとかないとかってほうがしっくりくる、というのが出てくる。この小説自体がまさにそうだ。小説を読む、という以上に、ある。日頃考えていたことが、文章をとおして顕れる。読書をしていて、まるで体験しているようだ、などということがあるが、これはそんな体験以上、である。いろんな声がある。幾つもの小説の断片が、記憶が、小説のなかに埋めこまれている。⇒2025/02/16
のぶ
94
コロナウィルス感染拡大最中の話。小説家の森木ヤマネは、「実践講座・身近な場所を表現する/地図と映像を手がかりに」という講座を担当することになる。そんな中で語られるいろんな物語。淡々とした世界の中で、同じような展開がずっと続いていくけれど、不思議と飽きることなく、最後まで読ませてくれるのは、作者の筆力の成せる業なのでしょうか。柴崎さんは過去に、二作しか読んだ事がなく作家の傾向がわからないので、読んでいて戸惑う印象もあった。今後も読んでみたい。2025/02/09
hiro
73
「続きと始まり」に続きコロナ禍の日常を描いた柴崎さんの作品。今回は『実践講座・身近な場所を表現する/地図と映像を手がかりに』というオンライン講座のゲスト講師を担当することになった小説家・森木ヤマネが主人公。ヤマネの出した、写真を選びその写真の場所を誰かに伝える文章を書くという課題に対する受講者の作品から、コロナ禍のためオンライン上で参加者たちが徐々につながっていくところが面白く、高架橋、国分寺崖線など知っている場所が登場すると自分も受講したくなった。このような出会いが当たり前の時代になったと強く感じた。2025/03/16
シャコタンブルー
68
作家の森木ヤマネを主人公にして数年前のコロナ禍を描いている。作者自身がその時に体験したことやその思いが色濃く反映されているような気がした。閉ざされた空間と狭い人間関係の中でオンライン講座だけが社会と繋がるツールとなる。互いの顔を見て会話することで安心感と生きている実感を確かめているかのように。特別な出来事は起きずに淡々とした日常が過ぎていく。ロバート・ジョンソンのブルースを聴き、アパートから見えるバルコニーの光に魅入る。そして1枚の写真からその時間と場所と人物像を想像することの楽しさを共有した。2025/02/18
ネギっ子gen
66
【登り方がわからない、道が見つからない。人生そのものが日々その状態です】読売新聞に連載された、コロナ禍の小説第2弾。『続きと始まり』で、<書けないんですよね。10年経っても、なにをどう言葉にしたらいいのかわからなくて>と愚痴る(サブとして登場した)小説家の森木奈央は、本作では姓は同じだが名前の方を“ヤマネ”と変え、主人公として登場。ヤマネは、「誰かが待っているものを、どこかで見つけてくるような。自分に何ができるのかは模索中ですね、まずは来年度の仕事をどうするかって感じですし、現実の生活としては」、と―― 2025/05/16




