内容説明
2013年,水月湖が過去5万年の時を測る世界の「標準時計」になった.その意味とは? 世にも稀な土の縞模様「年縞」を手にした若者たちの研究の実際は? いかにして結実したか.国境を越えた友情,ライバルとの戦い,挫折と栄光とを当事者が熱く語る名著に,その後10年間の研究の進展と心温まる後日談を追加.解説=大河内直彦
目次
プロローグ―「福井の湖,考古学の標準時に」
1 奇跡の湖の発見
最初は偶然だった
年縞研究の幕開け
掘れるだけ掘ってみよう
縞模様はなぜできる?
年縞が失われないために
埋まらない湖
これをどう使う?
2 とても長い時間を測る
長い時間の測り方
戦争の陰で
成り立たない前提
誤差をどう解消するか
樹木年輪の「壁」
ピンチヒッター
北川浩之の挑戦
長い戦い
もう一つの長い戦い
時間の統一
標準時をめぐるデッドヒート
水月湖の挫折
3 より精密な「標準時計」を求めて
93年コアの限界
イギリスの決断
1ミリも取りこぼさない
年縞独特の難しさ
7万枚の縞を数える
新しい技術
英独間のホットライン
見えない年縞
1200枚の葉っぱを拾う
北川データの復活
越えられなかった壁
最後の工夫
完成した年代目盛
コラム 追憶の水月ヒルトン
4 世界中の時計を合わせる
ポーラ・ライマーの挑戦
より厳密な定義
地質年代学の歩み
成果を論文にまとめる
水月湖のほとりで
ついに「標準時計」に!
歴史の教科書を書き換える?
エピローグ―「数えるなんて簡単なこと」
その後の10年―現代文庫版のための少し長いあとがき
解 説………………大河内直彦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
125
地球の年代測定は炭素14が使われると教わった世代なので、今は地層標本が取って代わったとは知らなかった。しかも福井県の小さな湖で採取された標本が、世界の標準になったとは。研究費の獲得から膨大な量のプレパラートを作成し、1㍉も取りこぼさず年縞を数えるなど20数年に及ぶ科学者たちの気も遠くなる労苦と協力の積み重ねの末に、過去5万年の時間を厳密に測れるようになった。科学とは派手な発見や発明ではなく、こうした地道な努力の上に成り立つのだと痛感させられる。文字通り「プロジェクトⅩ」の題材になりそうな科学者のドラマだ。2025/05/17
やいっち
52
旧版に若干の追加、再構成。改めて良書と感じた。サイエンス入門書として読んでもいい。年縞博物館へツーリングした四年前を思いつつ本書を楽しんだ。2025/06/09
さばずし2487398
30
日本の一湖に過ぎなかった水月湖。その堆積物『年縞』の発見から、年代決定の世界水準ものさしに認定されるまでの挑戦と汗の記録。やはり研究に関わったリーダーの話が一番面白い。縄文遺跡調査で偶然発見された年縞はどんなデータを得るのか、それをどの方向へ活かしその為にどんな研究法が必要か、機械を使うにも物理の専門家が必要だったり…。一つの出現が無数の方向性と必要性を生むその途方もなさに、科学者達は国境を跨ぎ、広過ぎる時間の長さに緻密過ぎる実験で歩んでいるのだとリアルに感じた。また印象的なのは著者自身の話よりも→2025/11/27
やいっち
10
「国境を越えた友情、挫折と栄光…。水月湖が過去5万年の時を測る世界の「標準時計」となるまでを当事者が語る。」という内容。やはり面白かった。敢えて新版も読んでよかった。 四年前、旧版について以下のように書いた(抜粋):2025/06/09
とり
7
福井県にある水月湖は、年縞と呼ばれる地層が7万年分も確認でき、奇跡の湖とも呼ばれている。ここまで長期間の地層が確認できる地層は他に発見されておらず、学術的に極めて重要で、地質学的年代決定での事実上の世界標準となっている。そこに至るまでの取り組みを本書は紹介している。以前、同じ著者の「人類と気候の10万年史」を読んだが、こちらは気候変動に焦点を当てており、本書と重なる部分も少なからずあるが、気候変動について議論するためにはその前段階として地道で長期間にわたる地層の分析が重要で、本書で詳しく知ることができる。2025/05/20




