内容説明
地球上に擬似的な恒星を創り、CO2を排出することなく莫大なエネルギーを生む夢の技術、核融合発電。その実現を目指しひた走る者たちを、人は「スタービルダー」と呼ぶ。官民がしのぎを削る熾烈な競争を制し、栄光を掴む者は誰か──徹底した取材で最前線に迫る
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
103
核融合発電の現状が果してどうなのかを知りたくて手に取ったが、核融合の原理や課題や歴史など、わかり切ったことばかりに紙幅の大半が費やされ、「何が最終解答か!」とがっかり。本来なら今年にも運転開始予定のITERの状況は?、1.5億℃という超高温に対する工学的な課題は大丈夫か?、三重水素の抽出は?など、知りたいことがちっともわからない。著者は核融合の開発の歴史を「いつでも、30年先と言っている」と揶揄しているが、同じ意味で、いつまでも「夢のエネルギー」と叫ぶのではなく、もっと地に足の着いた議論を期待したい。2025/03/17
山口透析鉄
25
これも市の図書館本。東京新聞に書評が出ていたので読みましたが、私が学生時代に読んだりした内容からほとんど進んでいません。いつもあと30年といわれ続ける技術というのは私の高校生の頃から一緒で、リチウム/トリチウム反応を取り込んだ核融合発電くらいしか実現できなさそうで、それもいつになるのかはっきりとはしない現状は相変わらずで、実現可能な科学技術ではなく、予算が欲しいから研究のための研究に堕して久しいです。 著者のエネルギー問題に関する見識の浅さも散見され、例によってドイツが原子力をやめたら困って、という俗説↓2025/05/23
ベンアル
11
原子力の博士課程を修了した著者が核融合の原理、企業の動向について説明している。原料であるリチウムが豊富であること、放射性廃棄物の管理が短いこと等既存の原子炉よりもメリットが大きいことが良くわかる。しかし、プラズマの挙動や融点が高いことなど課題が大変なこともわかった。2025/03/11
kamekichi29
7
核融合エネルギー開発の原理や歴史、現状など。 恒星が輝く原理と同じなので、核融合エネルギーの開発に関わる人たちをスタービルダーと呼ぶらしい。 核融合を行うために必要な電力以上の出力を得られるようにするのが課題。 原理的なところで理解できていないところも多いけど、なんとなく核融合によるエネルギー開発のイメージがつかめたかな。2025/03/21
TTK
4
重大な懸念の一つは、DEMO[トカマク原型炉]やLIFE[レーザー核融合発電所]が仮に実現しても、気候変動への対策には間に合わないだろうということだ。p.225 ▼ 産業規模太陽光発電(パネル)は[1ギガジュールあたりLCOE(共通基準電力コスト)]16ドル、洋上風力は24ドル、陸上風量は14ドルだ。太陽電池と陸上風力はすでに最も競争力のある発電方式だが、核融合が価格でこれらに勝てる可能性は低い。p.2332025/02/17