内容説明
大学病院での医療事故に関わり、世間から「偽医者」とバッシングを受け職場を追われた産科医の阿比留一馬は、逃げるように北へと向かっていた。途中、雪の中で産気づいた妊婦に出会い、小さな産院に同行する。そこは村唯一の分娩施設・竹下診療所だった。院長の相良の言葉で診療所で働き始めた一馬は、限界集落の産院の実情を目の当たりにする。さらに、彼の医療事故を世間に広めた女性記者が診療所を訪れて……。現役医師が描く、命に向き合う感動の医療小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
92
大学病院で産科の医療事故に関わり、その後一人の女性ジャーナリストによって書かれた記事が男の未来を奪ってしまう。男の名前は阿比留一馬、彼は人生から逃避するように北へ向かう途中に産気づいた女性に出会い、何の因果か彼女が住む村の産院に腰を落ち着けることに。産院の院長は一目で一馬を医師だと見抜く。村で一軒の医院も建設会社に買収されようとする中、一馬の記事を書いた女性記者が訪ねて来る。雪深い限界集落の中での産院の在り方を問いながら一度は諦めた医師の道を再び取り戻すまでの物語。著者が産科医だけに出産シーンがリアル。2025/02/22
ナミのママ
86
藤ノ木さんの作品を読むときはいつも息を止めてしまう。出産のシーンがとにかくリアル。場面を読み終わるといろいろな思いが頭を駆け巡る。それに加えて今作は青年医師の再生物語でもある。医療事故に関わり、さらにSNSで袋叩きにあった主人公の阿比留一馬。その珍しい氏名から身バレしてしまう。彼がたどり着いたのは限界集落の産院。70歳を超え1人医師で診療する院長の日々は過疎地の現在を浮き彫りにしてシビアだ。読みやすいが、読後は医療に関して改めて考えたい深い内容だった。2025/01/27
itica
70
タイトルから勝手に、胡散臭い偽医者のいる村の事かと思ったが、実際は医療事故を医療ミスと世間からののしられた産科医師が逃れるように行った雪深い限界集落での話だった。産院を支える老医師の思いと現実に向き合えない若い医師の葛藤、命懸けと言われる出産のリスクなどが、著者が産科医だからこその細やかさで表現されている。何より感動したのは新しい命の誕生シーン。思わず涙が出た。 2026/07/19
D
60
寒村の小さな産院に流れ着いた医療事故を起こしてしまった医師の再生。かなり刺さる小説だった。自分も済んでいる場所が本屋もなければ医院もない限界集落のようなところだからこそ。命を直接扱う医師の責任の重さやマスコミ倫理、人間の誕生と再生。善意だけで存続することの限界。これからの日本が直面し続けていく問題を深く切り込んでいる。2026/03/26
すしな
48
058-26.主人公が過疎地の診療所で過ごす日々は、医療事故の裁判を抱えた彼の葛藤と向き合う時間でもありました。医師として名乗れない状況の中で、地域医療の厳しさや人々の思いに触れ、彼自身の内面が少しずつ揺れ動いていきます。診療所を巡る人間関係や地域の事情も重なり、阿比留は自分の過去と向き合いながら、医師としての在り方を問い直していきます。物語は、過疎地医療の現実と人の再生を丁寧に描いた一冊でした。2026/07/15
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