内容説明
12人が毒殺された帝銀事件、実行犯の告白。
昭和23年、12人が毒殺された「帝銀事件」。
実行犯が告白する驚愕の真実!
亡くなった祖母の遺品整理のため訪れた父の実家で、穂月沙里は近所の古書店主から「穂月広四郎記」と題された奇妙な手帳を預かった。祖母から、沙里が来たら渡すよういわれていたらしい。
店主の話によると、祖母はその店で、昭和23年に帝国銀行椎名町支店で発生したいわゆる「テイギンジケン」関連の資料を多く購入していたという。
謎の手帳には、地元の石井という有名人が創設した部隊に入るため満州に渡った広四郎なる人物の、壮絶な体験が記されていて……。
「昭和100年」となる2025年、戦後最大のミステリーとされる未解決事件に挑む。
実行犯は? 真犯人は? 果たして冤罪か?
遠い過去の出来事が「今」につながる驚くべき結末とは?
衝撃のサスペンス!
(底本 2025年1月発売作品)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
136
私のような単純な素人には【帝銀事件】の謎がこうした小説として読めるのだもの「あり得る」って思えちゃう。本作は帝銀事件に行き着く敗戦までの過程に読み応えがあった。【731部隊】も謎が一杯で何処に真実がどこまで事実が・・って今更ながら怖い。現代パートから辿る過去が、敗戦直後の混乱の中で起きた事件に結びつく昭和のミステリーで、最後に現在に至る親子の会話にホッとするような(やっぱり小説だよね)そんな感じだった。だけど鬼哭かぁ。広四郎を泣いた青鬼として結ぶのはモヤモヤしちゃう。そんな私は鬼ですね。2025/02/21
ちょろこ
111
731部隊に病んだ一冊。あの昭和史に残る未解決事件「帝銀事件」。その真相は?真犯人は?謎多きまま闇に埋もれた事件の異説として描いた物語。満州の731部隊の任務にほぼページを占められていたことが正直キツかった。"丸太"の意味するものがわかった時、人を人とも思わない鬼畜実験行為、逃げるか、心を無にするかどちらかしかない壮絶さにただひたすら心は病むばかり。帝銀事件の異説、裏側事情、終戦後の各国の腹黒い思惑にも病まずにいられない。このタイトルに納得。その場に染まりゆく姿といい改めて戦争は人の心をも殺す、そう思う。2025/07/18
ゆみねこ
70
戦後の混乱期に起きた「帝銀事件」。事件後逮捕された画家は獄中で無実を訴えながら、病死。しかしこの作品では、千葉県の小作農の次男坊・穂月広四郎が貧しさと徴兵から逃れるため満州に渡り、731部隊で悍ましい体験をする。終戦・シベリア抑留・ソ連とアメリカの思惑や731部隊上層部の身勝手さそして事件が…。戦争は人の心を狂わせ、人の運命も狂わせる。事件の陰にもしかしたらこういう事実があり得たかもと想像をかき立てられた。2025/04/25
がらくたどん
56
人から鬼に堕ちるのはもしかしたら案外に容易い。特に世界が「大義のために鬼であれ」と鼓舞する場合は。鬼になっても人だった頃の大事な誰かの面影は記憶の底にあるけれど、その大事な誰かを救いたくても鬼には人を喰い殺す鬼の手立てしか見つけられない。祖母亡き後に孫娘は戦中に生きた同じ苗字の見知らぬ男性の手記を受け取る。手記には、自分が「帝銀事件」の真犯人だという告白と敗戦までの長い満州での軍属経験から復員後の犯行に至る出来事が綴られていた。戦中戦後の焦土には鬼に堕ちた者達の慟哭がどれだけ響いて消えたのか。誠実な力作。2025/07/25
rosetta
35
★★★★☆最終的に帝銀事件に行きつくけれど、語られているのはほぼ満州の七三一部隊のこと。歴史の重さとその奔流に弄ばれる庶民、だが大切な人のために真摯に生きていくこともできた、それが例え鬼の所業でも。戦争が、国のトップの野望が国民を巻き込んで不幸のどん底にたたき落した時代、再度の応召から逃れるため満州に渡った広四郎。犯罪者や満人、漢人を材料に病原菌を兵器にする研究を続ける悪魔のような七三一での仕事にも人間は次第に慣れてしまう。敗戦で何とか日本に帰ってきた広四郎はかつての初恋の人を救うために覚悟を固める2025/03/08