内容説明
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実体のみで構成されるべき音楽という芸術に於ける核心部分を削ぎ落とすという無意味な行為。コバヤシは大満足し、爆発こそしなかったがこれを芸術と感じていた。この無意味な行為を世論と対決させる為のプラットフォームとして、コバヤシはダンケレコード店を開店した。コバヤシの脳内で膨らむバンドの存在を音楽の基本手段を取らずに、然し音楽として一方的に具体化させたら、世論は何処まで付いて来るだろうか。コバヤシが用意したバンド達の存在を知った愛好家は、一体どの様な反応を示すのか。ダンケレコード店はコバヤシが仕掛けた社会実験の場とも言えた。芸術としての価値を生みだす核心部分を削ぎ落とすことによって、音楽はいまだかつてない、あらたな芸術性を創造する――クリエイティビティとピュアな感性、そこからうまれたユニークな想像力が紡ぐイノベーション・ストーリー。
感想・レビュー
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ゆうきなかもと
5
少年の頃、架空のバンドを妄想して遊んでいたことがある。そして主人公がその年でそれをやるの?!かと少し戸惑った。しかし本書のちょうど真ん中くらいの「品川さんの死」で一気に腹落ちした。これは真にアートについて書かれた小説だと。僕の理解としては、宮台真司のいうアートの定義、「人を傷つけるのがアートの機能である」というのがまさにここに描かれていたと感じた。そう、品川さんは、ダンケレコード店と出会い、二度ともとに戻れないほど価値観を砕かれたのだ。そして読後、僕も後戻りできないところに来てしまったような気がする。2024/09/30