内容説明
歴史家の仕事とは
戦後80年――今こそ歴史を振り返り、
あるべき国家と国民の関係を考える。
日本近現代史の泰斗が、国家と国民、東日本大震災、
天皇と天皇制、戦争の記憶、世界と日本、
そして日本学術会議会員任命拒否問題を論じる。
戦後80年を前に、国家と国民の関係が大きく揺れ動いている。
危機の時代とも言うべき今こそ、その関係を国民の側から問い返し、
見つめ直すことが必須となる。
話題のベストセラー、新たに9編を増補し、待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
80
1930年代の日本の外交・軍事を専門とする著者が2010年から現在までの「今」を歴史家の目線で見つめ直す。初出は新聞連載のエッセー「時代の風」(2010-12)、同じく連載コラム「加藤陽子の近代史の扉」(2020-22)、その間に「今週の本棚」に書かれた書評など毎日新聞掲載の論評をテーマ別 に再構成。東日本震災の教訓、天皇像、戦争の記憶など。中でも国家に問うと題した章の、著者ら6人の学者が学術会議メンバーの任命から除外された件の論考に注目。菅内閣の重要課題の一つが、科学技術基本法(旧法)を安倍政権下で⇒2025/03/13
zoe
14
後ろの方に、本を紹介するパートがあるのですが、「古都の占領」という書籍を紹介していました。戦後7年間の京都と沖縄は同じだという。近頃では、日本学術会議のニュースも相まって、著者の情報をよく耳にします。日本の良心、良識を考える「この国のかたち」を見つめ直すという本。科学はボトムアップであるべき。職業政治家が科学をトップダウンできるのかっていうと、それはできないので、ボトムアップで出てきたアイデアをまとめて、トップダウンに見せかける仕掛けにしたいという話があるのでは。2025/05/18
武井 康則
12
コロナ下、学術会議任命拒否問題、天皇退位など、平成末期の時局に毎日新聞に書かれたコラム等を問題別に編集しなおしたもの。モデルとなる昭和初期の事変時の様々な局面と対比し、適切な意見を述べている。思い付きでなく検証され観察された意見を磨き抜かれた言説で語り、その透明度の高い説得力に魅了される。知性とはこれなんだとうなってしまう。そしてその読書量の膨大さ、幅の広さ。憂うる内容なのに、論理の鮮やかさに快感を感じてしまう。 2025/02/17
coldsurgeon
10
昭和初期の軍事と外交を専門とする歴史学者による、あるべき国家と国民の関係を考える短文集。現代社会に生きる者の役割として、国家に問う姿勢は重要だろう。歴史の真実は、人間の行動の記録として残された事実だけで成り立つのではなく、人間が書いたり発したりした言葉に現れる知性の中にもあるという。学んだつもりであり、その後もよく書を求めていたが、意外と多くの事実を知らず、間違った認識を抱いていることに気づかされた。この著者を日本学術会議の中に入れたくない政府の企みは分かった。2025/03/22
まさにい
8
問題の所在を考えるにはいいヒントが満載であった。天皇制(皇室典範を含めて)や天皇についての記述は、問題提起の範囲であり著者の見解は無い。確かに難しいと思う。正直、天皇の萬世一系性の呪縛、その宗教性については、一般国民と同列に語ることは出来ず、また国民の無意識の部分での天皇の存在は大きい。現憲法は、国民主権を謳っているが、その第1章が国民ではなく天皇である点も、天皇の存在の大きさを物語っている。僕としては、天皇のこの特殊性を現憲法が封印していると思っている。この封印の仕方が問題の所在なのではないかと思う。2025/07/20