内容説明
運転免許証を取得したつかさが家に帰ると、小学生の妹が父を殺していた。テレビからは東京湾に怪獣が出現したという前代未聞のニュースが流れている。つかさは妹を守るため、東京へ父の死体を棄てに行くことを思いつく。短編として史上初めて日本SF大賞の候補となり、第55回星雲賞日本短編部門を受賞した表題作ほか、伝説的な“Z級”映画の上映会中、街にゾンビが出現し館内に籠城した観客たちの運命「『アタック・オブ・ザ・キラートマト』を観ながら」など全四編。日常のなかに立ちあらわれる非日常の世界の恐怖と希望を描く傑作短編集。/【目次】「わたしたちの怪獣」妹が父を殺した。姉は怪獣が出現し壊滅状態となった東京に、父の死体を棄てに行く。第55回星雲賞日本短編部門受賞作。/「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」時を遡って犯罪や災害を防ぐことができるようになった未来。動画投稿サイトにアップされた、起きるはずのない事件の映像の正体とは。/「夜の安らぎ」家にも学校にも居場所を見つけられない孤独な少女と、ある日街に現れた美貌の吸血鬼の邂逅。/「『アタック・オブ・ザ・キラートマト』を観ながら」伝説的な“Z級”映画の上映会中、街にゾンビが出現。映画館に籠城した観客たちの運命は。/著者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
読書好きのハシビロコウ
26
妹が殺してしまった父親の遺体を、突如出現した怪獣の襲撃に乗じて処理しようとする表題作をはじめ、B級映画的モチーフを背景に、日常の中で生きづらさを抱える登場人物たちが、一筋の希望を見つける短編集。非日常を抱えながら、もがきそれでも前を向こうとする姿勢は、少し前に読んだ村上春樹の「神の子供たちはみな踊る」を思い出します。一番好きなのは、「アタック・オブ・ザ・キラートマトを観ながら」。危機的な状況だからこそ、笑い合える仲間やくだらなさが必要だよねという、人間ならではの向き合い方が心を打ちます。2025/06/20
塩崎ツトム
19
意思があるのかないのかわからない、集合的無意識というか、そういうイド的な存在がゾンビや怪獣なのかもしれない。自然災害について人間の畏怖や神格化が遠くなったとき、もはや人々を恐れおののかせ、どこかに来世というものを信じさせてくれるものはそういう空想のモンスターだけなのかもしれない。ああ、だれかこの東武東上線沿線から、わたしをカタストロフの向こう側へと連れて行ってくれ!2025/09/03
にゃんこ
13
掘り出し物!SF短編集。『キラートマト』のラストは、作中でも出てきた『1Q84』(村上春樹)へのオマージュなのかなと思いました。こんなこと言ったらビックリされてしまうと思うけど、本家よりこちらの方が好み(笑)2025/09/06
うさみP
9
そいつは悪霊か、怪獣か。誰もが心の奥底に宿している終末の風景。現実に太刀打ちできない私たちは不完全だから、オモチャ箱をひっくり返して、怪獣と遊び、タイムマシンを作り、吸血鬼と交わり、ゾンビと戯れる。青春ジャンルの一つである『死体埋め』に怪獣要素を組み込んだ表題作はこんな事やっちゃってもいいんだと驚き。救いとは違ったこの前向きな感情は何?それでは、よい終末を。2025/12/08
播州(markⅡ)
9
万人受けはしないかもしれないけれど、不思議な引力のある中短編集。諦念というか、悲観というかぼんやりとした不安のようなものが下敷きになっているのだが、決して暗いだけではない面白さがある。吸血鬼のでてくる「夜の安らぎ」と、残酷なのだけれど、本歌がバカバカしいためどこかぬけた明るさのある「「アタック・オブ・ザ・キラートマト」を観ながら」がお気に入り。2025/10/19




