内容説明
東北地方沿岸部のとある高校。そこで起こるささやかな謎の中心には、いつだって彼がいた。校舎が荒らされた前夜に目撃された青い火の玉。プールサイドで昼食を取っていたとき、話しかけてきた同級生を水中に突き飛ばしてしまった女子生徒の真意。テーマ不明の、花瓶に生けられた花の絵。そして、高校卒業後大学に入学するまでの何者でもなかった二〇一一年の“あの日”以来、私たちの前から姿を消してしまった彼自身──。これは大切なものほどなくしてしまう悪癖に悩まされ、それでも飄々と振る舞う青年が歩んだ、高校生活三年間の軌跡を辿りなおす物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
236
クセ強すぎてイライラさせるが妙に憎めないヤツ。どの学校でも1人はいるユニークな生徒に絡んだ学友たちが、日常に生じた奇妙な謎を解かれて思わず心を衝かれてしまう。穏やかでささいな謎が3編続き「これはミステリ本なのか」と思っていたら、4編目で唐竹割りで驚かされて第5話で予想外の真相が明らかにされる。東日本大震災から14年過ぎたが、未だ2千5百人以上が行方不明という事実を改めて突きつける。みんな彼を忘れないし、会ったことのない人まで彼を知りたくなってしまう。天災は一切を破壊するが、人の想いと記憶は壊されないのだ。2025/03/13
hiace9000
165
これまで数多く書かれた「3.11小説」。喪失や死に別角度から迫り、瑞々しい色彩感と共にもどかしいまでの切なさで青い「生」を捉え胸を衝く今作。菅原晋也というちょっとクセのある、だがおそらく何処にでもいたであろう一高校生の吹けば飛ぶような等身大の日常、それを周りの仲間たちの目線で写し取った3年間。”大事なものを大事にできない悪癖”を絶妙の伏線としつつ、彼にあったであろう未来に思いを馳せ、日々織り込まれた日常を忘れないという悼み方。一人の青年の生きた証は、震災が奪った多くの命への「祈り」と幾重にも重なっていく。2025/04/06
いつでも母さん
161
彼はもうこの世にいないのに、彼について詳しくなっていく。 そう、これは弔い。悼みであり、祈りだ。あの日を境にいなくなった彼と沢山の人達に・・残った者は喪った何かを埋めるために(埋まる訳無いのに)あの日よりもっと深く広く傍に居るように生きていくのだなぁ。特別なことはなくたって昨日の次は今日。そして次は明日・・当たり前の日々は決して当たり前なんかじゃないのだ。2025/03/17
ジュン
143
この本は菅原くんという、どこにでも居そうな高校生の男の子の話しを時には先輩が、時には後輩が、同級生が、顧問の先生が、同じ大学に入学したロッカーが隣りの子が、章ごとに人が変わって話していく。彼には美術の才能があった。ああ、とんでもなく一つの事に長けてる人ってこんな所あるよね…と菅原くんのちょっと惚けた様なエピソードを微笑ましく思い、ああ〜またやっちゃったんだとすっかり菅原くんの魅力に読者がハマった頃にガツンと頭を殴られる様な作品です。ある人が抱えてた秘密が明るみになり…後は、皆さんが是非読んで欲しい。2025/08/23
モルク
136
美術部員の高校生菅原晋也を巡る物語。とても大切なものであるはずの物をすぐに忘れてしまう晋也。全く悪気もなく彼自身大切なものであることは重々承知しているのに…そんな悪癖のある彼の高校3年間。部活の先輩、同級生、教師、後輩などの立場で語られる彼はつかみ所がない。第一志望の大学に合格し卒業式も迎えた直後の3月11日、そうあの日彼は姿を消した。5年以上時は過ぎ祖父の痕跡を探しに来た青年と行動した同級生と後輩は…。前半の飄々とした感じとは変わり重い空気が流れる。真実はわかったが、どう気持ちを収めたらいいのだろう。2025/05/23
-
- 電子書籍
- 恋をするには近すぎて~n回目の恋の結び…




