ちくま文庫<br> 日本語の外へ

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ちくま文庫
日本語の外へ

  • 著者名:片岡義男【著者】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 筑摩書房(2025/01発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480439994

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内容説明

湾岸戦争をアメリカのTV放送だけで追ってみる、という試みから始まった本書は、アメリカを突き動かす英語という言葉の解明へと焦点を移していく。母国語によって人は規定され、社会は言葉によって成立する。たえず外部を取りこみ攻撃し提案していく動詞中心の英語に対し、日本語とは自分を中心とした利害の調整にかまける言葉だと著者は結論付ける。言語にはそれぞれ美点と歪みがある。日本語のなかで生きる私たちは日本語という「歪み」を通してしか考えられない。「戦後」という時空間は、実はその「歪み」そのものなのだ。ではその歪みから自由になることはできるのだろうか。「歪み」を熟知したうえで「歪み」を駆使すれば、日本語の外へでていくことはできる、と著者は書く。英語と日本語への熟考が、やがて読み手を世界の認識の根源まで導く鮮やかな思考の書。 1997年は加藤典洋の『敗戦後論』と片岡義男のこの本の出現で画期的な年として記憶されることになるだろうと思った。(高橋源一郎『退屈な読書』より)

目次

第1部 アメリカ/湾岸戦争を観察した/八月二日、軽井沢、快晴/犬にでもくれてやれ/ウエイ・オヴ・ライフを守る/町を囲んだ黄色いリボン/「日本はアメリカとともにあります」と首相は言った/「神の目から見れば」/仕事をすませて家へ帰ろう/大統領の得点/帰って来る死体の映像/ヘリコプターは上昇し飛び去った/メモリアル・デイにまた泣く/第九条/フリーダムを実行する/個人主義にもとづく自由と民主の視点/真実はまだ明かされない/遠近法のなかへ/『クレイジー』というテーマ曲/エルヴィス・プレスリー・エコノミックス/現状は好転していかない/「彼らはとにかく頑固だよ」/ラディカルさの筋道/ヒラリー・ロダム/ヴァージニア・ケリーの死/グレン・ミラー楽団とともに/もっとも良く送られた人生/大統領が引き受けたこと/小さく三角形に折りたたんだ星条旗/煙草をお喫いになりますか/午後を過ごす最高の場所/キノコ雲の切手/ジープが来た日/ちょっと外出してピストルを買って来る/キャロル・ホルトグリーン/第2部 日本語/世界とは母国語の外のこと/薄い皮だけがかろうじて英語/懐かしいネガティヴ・ステレオタイプ/頭のなかが日本語のままの英語/「モースト・インポータント」とは? /母国語の呪縛の外へ/IとYOUの世界/生まれながらにして客観をめざす言葉/現実のしがらみと「私」/利害の調整、という主観の世界/動詞とは個人の責任のことだ/話しかたと聞きかたの洗練/アメリカ国内文脈ではなく、世界文脈の英語を/母国語の性能が浪費される日々/人生のすべては母国語のなかにある/母国語は「いつのまにか自然に」身につくか/母国語の性能と戦後の日本/江戸から円高まで──日本という試み/あらかじめ約束されていた結果/ペシミズムを越えようとしていいのか/資本主義への合流車線/遠く懐かしい文化論の時代/真の文化とは時間の蓄積だ/僕の国は畑に出来た穴だった/あとがき/解説 高橋源一郎

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

32
意地悪く言えば、もちろん片岡義男なりに多彩なソース(ニュース報道や読書や実人生など)を参照してはいるものの、確固たるエビデンスではなく片岡自身の皮膚感覚を頼って論を進めている印象がある。だが、だとすればそのフィーリング優位で主観的な片岡の著述がなぜこのぼくの心理に直に訴えかける説得力を持つのか、それこそ問い直すべきだとあらためて唸る。つまり片岡がバイリンガルとして日本語と英語の双方を横断し、その過程で実に緻密に自らの感覚を言語化して鍛え上げた賜物としてこの本が結実したと言えるのでは。手堅い論述に圧倒される2025/02/09

阿部義彦

17
分厚い。これは読むのに時間が掛かったし、つらつらと流し読み出来る内容でも有りません。前半アメリカ論、主に湾岸戦争の報道を通して、徴兵制が根付いているアメリカマインドをベトナム戦争と比較して紐解きます。その他ケネディ暗殺を巡る未だ解明されてない謎の数々など、ブッシュとクリントン等など、後半日本(語)論、日本語には英語のIに当たる言葉は無い!憲法9条について、教育論、日本の教育システムの目的は最終的に誰もが同じ考え方をする様に仕向ける。無批判に体制に従い要求に従わせる目的の為。とにかく刺激的です。復刊ありがと2025/01/13

Go Extreme

2
戦争とメディア: 現実の複雑性 市民の受動性 愛国心の表現 アメリカの愛国心と戦争: 一般市民の感情 湾岸戦争時の状況 市民の自由と政府の影響 アメリカの自由の再考: フリーダムの再定義ー自由の概念を見直し公共性を重視 教育における多様性 経済と安全保障: 経済と安全保障の連携 社会的変化と労働市場: 製造業の衰退 新たな労働環境 言語と文化: 言語の重要性ー日本語は日本人のアイデンティティを形成 言語による認識→文化 日本文化の再評価ー日本人の共通性や価値観を理解するため言語の役割の再考必要2025/01/29

さえもん

1
ウクライナでの扇動、ノルドストリームの破壊…、アメリカは今もウェイオブライフを追求し戦争を巻き起こしている。 たしかに、自分という人間は昔と同じようでいて、携帯電話やインターネットがなかった時代の自分とは随分違う前提・思考方法を持った人間になっていて、もはや昔の自分がどういう考え方をしていたかは想像することが難しくなっている。それも本質的には人間の生とは関係のない大量消費によって。2025/03/01

Y.T

0
日本語的なものの考え方と、英語的なそれとの比較は、確かに的を得ている面があると思った。しかし、本書執筆当時のことはさておき、現在の世の中を見渡すと、本書ですくいきれなかった側面もあるのかもしれない、と思った。特に、社会の基礎を個人の自由に基づいて構成しなおすべき、という理念は、日本のみならず、世界のどこかで実際に実現したことがあるのだろうか、とも思った。2025/03/01

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