ちくま新書<br> 景気はなぜ実感しにくいのか

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ちくま新書
景気はなぜ実感しにくいのか

  • 著者名:前田裕之【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2025/01発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076649

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内容説明

「給料が上がらず生活が苦しい」という国民の実感と「景気は緩やかに回復している」という政府の発表は食い違っている。テレビや本で紹介される経済学者の言うことは現実問題と関係が無いとすら思える。どうしてデータと実感がズレるのか。GDPや景気動向指数はどのような仕組みなのか。景気の問題と二百年以上向き合ってきた経済学の歴史から、現代の政策に至るまで「景気」の実相を究明し、不透明な日本経済に光をあてる。

目次

はじめに/第1章 「景気」とは何か/「景気」は経済用語か? /経済活動の動向を示す/経済と人体は違う/気分だけで景気は変わらない/鴨長明が見た「景気」/人に見立てた経済に夢を抱く/人は老いるが経済は成長を止めない/人間中心主義への批判/成長のための成長を求める資本主義/ロビンソン・クルーソーなんていない/自分や家族の生活が一大事/人それぞれの景況感/第2章 政府の景気判断は正しいのか/トレンドとサイクル/山あり谷あり/景気動向指数/産業構造の変化を反映/指数の作り方/政府の裁量が入る公式見解/景気循環に神話由来の呼び名/翻弄される政府/「悪くなった」とは言いたくない/景気動向は みづらい? /広がる指標と実態のズレ/第3章 1%成長時代の景況感/GDPは総合成績/人件費込みの粗利益の合計/GDPは企業の目的ではない/儲けを分け合う企業と労働者/外国人観光客もGDPに貢献/持ち家が生む「家賃収入」/名目と実質/成長率に左右される生活実感/景気実感の変遷/年間10%の経済成長/高度成長の要因/成長を支えた設備投資/「バブルの頃は良かった」のか? /失われた30年のはじまり/「景気回復の実感がない」/それでも日本は成長している/まずは1%成長/第4章 経済統計はどう誕生した? /「景気」と向き合ってきた経済学/19世紀初頭に最初の恐慌/産業革命/世界大戦と大恐慌/循環は10年周期という仮説/周期が異なる様々な「循環」/「いずれ不況は均衡に向かう」/仮説や理論で物事を見るクセ/景気動向指数の起源/経済の大きさを測る/GDPで幸福は測れるのか? /政府の意向に沿う統計/GDPの役割と限界/第5章 大不況の中で生まれた経済理論/経済理論は思考実験の道具/レンズの取り扱いに要注意/三人の経済学者/マルクスの問題意識/共産主義社会という夢/労働価値説/資本家の行動で循環する景気/労働者の苦況を映すレンズ/ワルラスの正義論/限界効用理論/価格調整で均衡する市場/労働者と資本家が対等になる世界/「合理的な」理想郷を映すレンズ/パンフレットと大著を遺したケインズ/一般理論/ハッピーエンドを映すレンズ/ワルラスとケインズを使い分け/ケインズの失墜とマルクスの退潮/複雑な現実世界/レンズをはずして見た世界/第6章 袋小路から抜け出すには/染みついた「経済学の思考法」/板挟みの経済学者/あれもこれもは難しい/成果を出せない政府/必要なのは個別の対応/「豊かさ」の捉え方/経済学が見落としてきたもの/アンペイドワーク/コミュニティ/幸福/幸せの損得勘定/幸福は測定できるのか? /仮説と合わない実生活/幸福の経済学/これからの闘い/おわりに/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

よっち

27
「給料が上がらず生活が苦しい」という国民の実感と「景気は緩やかに回復している」という政府の発表はなぜ乖離しているのか。「景気」の実相を究明し、不透明な日本経済に光をあてる1冊。GDPや景気動向指数はどのような仕組みなのか。そもそも「景気」とは何か、景気変動を繰り返しながら経済成長してきた歴史的視点を踏まえつつ、タイトルからすると終盤の結論はやや迷走した感もありましたが、国民の要求水準が高まってきたことから、景気動向指数などから判断する政府の景気判断とは乖離してきた現状を解説してくれる1冊になっていました。2025/02/04

koji

15
テーマは「政府が景気は回復していると言いながら、なぜ国民はそれを実感できないのか」。著者の結論を(少し大胆に)要約すると「日本が低成長経済に陥った90年代以降、政府の経済政策は、次々に(ケインズ的な)財政出動を打ち出し続ける一方で、少し景気が浮揚すると、国民に(新古典派経済学的な)『個人の自助努力や自己責任』を求める規制緩和策を繰り返し、結果的に国民は(新自由主義や市場原理主義が跋扈する)厳しい市場環境の中で、財政出動の恩恵を受けないまま疲弊して、政府と国民の乖離拡大に繋がった」というもの。コメント欄へ2025/07/04

まゆまゆ

14
なぜ政府が発表する景気判断と国民が感じる実態がズレるのか、について考察していく内容。マクロ経済とミクロ経済の違いといってしまえばそれまでだが、そもそも経済学に基づく考え方が現代社会に合っていないのではないか。安易なケインズ主義で経済を語れないのは明らか。必要なのは全体の底上げ、ではなく個別の対応ではないか。2025/04/08

乱読家 護る会支持!

4
①景気が良くても残業代は増えにくい。 景気が良くなると、短期的には残業代が増えるはず。しかし働き方改革により、長時間労働が少なくなり、昔のように無制限に残業するわけにはいかなった。 ②好景気と賞与増、昇級にはタイムラグがある。 労使の交渉は多くは春に一回だけなので、景気が良くてもすぐに賞与増、昇級につながるわけではない。 ③少子高齢化による国民負担率のアップ。 1970年度には24.3%だった国民負担率は、現在はほぼ50%。 ④失われた30年。 他国はどんどん成長しているのに、日本はわずかな成長。2025/07/01

お抹茶

4
前半は景気実感,後半は経済思想史を説く。個人や企業のばらつきが大きくなるとマクロの経済指標の寄せ集めでは経済全体の状態を推量できない。GDPとは一年間の経済活動によって膨らんだ風船で,次の年には萎んだところからまた膨らみ,この活動を経済成長と呼ぶ。19世紀初頭からの120年で景気循環の周期に注目する研究が進み,景気判断や景気予測は学会の主流派ではない。主流派経済学の分析対象から外れがちだが個人の自己決定で重要な要素として,アンペイドワーク,コミュニティ,幸福を挙げる。2025/03/01

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