内容説明
若くして隠居した孫一郎が、父から受け継いだ屋敷に移り住むと、庭の池には人魚が暮らしていた。その名は、おたつ。彼女に懐かれ「夫婦になってあげる」と言われた孫一郎は、結婚をあきらめさせるため、人と人ならざる者が恋に落ち、不幸な結末を迎えた話を語る。だが、二人の間には少しずつ変化が起き――。選考委員全員が「これ以上ないラスト」と驚嘆した日本ファンタジーノベル大賞受賞作。（解説・大森望）
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小太郎
30
「日本ファンタジーノベル大賞2021」受賞作。若隠居の孫一郎が主人公、実は屋敷の池に人魚のおたつが住んでいて。おたつは孫一郎に「夫婦になってあげる」と言い寄るのですが・・・読んでいて『家守奇譚』を思い出したんですが、それほど枯れた話でもないけど、と後書きを読んで納得。作者は『しゃばけ』が好きだったんですね。そういえば若旦那と孫一郎のなんとなく惚けたところはそっくり。ただこちらの方がよりファンタジー色は強いし読ませる出来になってます。異類婚姻譚としても興味深い。最後は恩田陸さんがいうようにこれしかない！★42025/02/28
豆乳くま
14
デビュー作にして日本ファンタジーノベル大賞受賞作。帯には錚々たるメンバーの推しにてジャケ買いでした。本当に、ほぅ〜とため息が出るような作品でした。呉服屋の放蕩長男の孫一郎は父の別宅だった家で若隠居。庭の池に「おたつ」を飼っています。おたつは人魚です。無邪気なおたつは孫一郎と結婚する、と言います。人と人ならざるものとの話を聞きたいとせがみます。美しく残酷な昔話を全てひっくるめたかのような衝撃のラスト。これ以外考えられないと言わせたゾッとする愛の形。2025/03/11
陽ちゃん
7
帯の「異類婚姻譚史上、最高の恋」を見て読む気になりました。商家の若隠居孫一郎と人魚？のおたつがたどったラストは確かに究極の終わり方ですが、私なら遠慮しときます(笑)孫一郎のしゃべり方が誰かに似ていると思っていたら、解説で『しゃばけ』の影響を受けていると。納得です。2025/04/18
辻本 敏久
3
昇天した。2025/04/24
アイ
3
庭の池に住む人魚の女の子(おたつ)に求婚される、若隠居の孫一郎。物語を聞くのが好きなおたつに、人と結婚した猿や「つらら」や馬と結婚した人の話を聞かせて、のらりくらり。 池の淵に手をつき、お話を聞く人魚の姿は、可愛いだろうなと想像し楽しく読み進めていましたが…。そこからこのラストは想像もしていませんでした。 ファンタジーラブコメのように見せて、仄暗く、ゾッとしました。面白いです。2025/02/15
