内容説明
夢枕獏、恩田陸両氏推薦! 新たな山岳小説!
緑里はアラスカに向かっていた。旧友シーラと北米最高峰デナリに登るためだ。
シーラの幼馴染、リタ・ウルラクは新鋭の女性登山家として名を馳せていた。二人の故郷、サウニケは北極海の小さな島だが、地球温暖化の影響で海に浸食されている。このままでは島は海に沈む――故郷の危機を世界に知らしめるため、リタは登山家として有名になるべく冬季デナリ単独行を計画した。写真家としての先行きに悩んでいた緑里はリタの果敢な言葉や行動に励まされ、彼女がそれを成しえたら真っ先にポートレートを撮ることを約束した。だがデナリの下山中、リタは消息を絶ってしまう。山頂から“完全なる白銀”を見た――という言葉を残して。
リタの登頂を疑うマスコミは彼女を〈冬の女王〉ではなく〈詐称の女王〉と書き立てた。緑里とシーラは、デナリに挑み、リタの登頂を証明することを決意。しかし、世界最難関への登攀は一筋縄にはいかない。ブリザード、霧、荷物の遺失、高度障害……二人の信頼関係も揺らぐ。困難を乗り越え北米大陸で最も高い地へ手を伸ばす緑里。その先に見えたものとは。
極限の地だけでなく、社会でも闘う女性たちを描きだす、気鋭の著者の新境地。
※この作品は過去に単行本として配信されていた『完全なる白銀』 の文庫版となります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さち@毎日に感謝♪
21
ただ山頂を目指す話ではなくて、本当にリタは山頂に登ったのかというミステリー要素、男女差別や人種差別の要素もあって面白かったです。頂上に登った人にしか分からない景色を見てみたいとも思いました。2025/02/19
よっち
21
北米最高峰デナリの冬季単独行に挑み、下山途中に消息を絶った親友リタ。彼女が登頂した証を求めるべく、写真家の藤谷緑里とシーラがデナリに挑む山岳小説。自らの故郷サウニケの危機を知らしめるために、登山家として活動していたリタ。行方不明後、彼女の言動を疑い<詐称の女王>と書き立てたマスコミ。その不名誉を晴らすために親友二人がデナリに挑む展開で、ブリザードや霧、荷物の遺失、高度障害といった厳しい状況の連続に、二人の信頼関係も揺らぎかける展開でしたけど、様々な葛藤や危機も乗り越えて辿り着いた結末が印象的な物語でした。2025/01/07
香翠
16
北米最高峰の冬季デナリに挑む緑里とシーラ、そして単独登頂に挑んだリタ。三人の女性たちの不器用な生き方が描かれた物語。彼女たちが極限状態の先に見た風景は?想像してはみたけれど、今の私には…2025/03/28
とろりんとう
6
新聞広告で『神々の山嶺』著者の夢枕獏が絶賛していたので、読もうと思っていた本。 冬季デナリで消息を絶ったリタ・ウルラク。マスコミに彼女の登頂を疑う記事を書かれる。彼女の親友・藤谷緑里とリタの幼馴染・シーラは彼女の足跡を追い、冬季デナリに挑戦する。過去のゆったりした展開と、現在のデナリ登攀の早い展開が交互に進み、それぞれが関わり合い、絶妙に進展。終わりも全てがきれいに判明する訳ではないが、それが逆に良い。とても楽しかった。作者もデナリがマッキンリーに改称されてしまうとは思わなかっただろう。2025/04/27
アップルティー
4
生き方の物語、友情の物語、登山の物語。日本人の高校生緑里は本屋でふと目にしたアラスカ州サウニケ島の写真集に惹かれ、現地に飛び、リタとシーラと出会う。リタは地球温暖化によるサウニケの消滅を危惧し、島に世界の目を向けさせるために女性初の冬季デナリ単独登攀に挑む。下山後、今やカメラマンとなった緑里に写真撮影を依頼して…しかし「完全なる白銀」との言葉を残しながら、リタは下山途中で消息を絶つ。彼女は果たして頂上にたどり着いたのか。一部のマスコミによる「詐称の女王」との汚名を晴らすため、7年後、緑里とシーラは冬季⇒2025/06/03