内容説明
19世紀末から20世紀初めの戦争が続く時代に,「個性」という絶対的差異を自覚し,孤独な闘いに生きた漱石.漱石の諸作品と生涯について,新たな視点からたどりなおす.通説とは違った漱石の「個人主義」の新しい読み方を切り開き,現代の視点からその魅力を鮮やかにくみあげた「再入門書」.文庫化に際し,最終章を大幅に改訂.
目次
第一章 猫と金之助
はじめての小説/引き裂かれる世界/類の対立と個の対比/本名と筆名/吾輩は金之助である/捨て猫と捨て子/捨てられた拾われ猫/本当の親は誰/「爺婆」と「両親」/塩原と夏目/「塩原」から「夏目」へ/自分で自分を命名する
第二章 子規と漱石
「漱石」という号/誤ちとしての名/命名者としての子規/子規の手紙/「殺して仕舞った」/切実さへの感受性/「気の毒」という感触/平民と士族/「文学」的盟友関係/「送籍」と従軍/子規の死
第三章 ロンドンと漱石
留学の命令/高等教育の拡充/帝国主義時代のイギリス/ヴィクトリア朝の終焉/英語にして英文学にあらず/不在の英文学/「書物丈でも買へる丈買はん」/池田菊苗との出会い/「文学」の外部/「進化論」的人間観/「退化」= ディジェネレーションの恐怖/不適者の排除と切捨て/「黄禍論」の時代/「自己本位」の孤独な闘い/「漱石」の小説と「退化論」の影
第四章 文学と科学――『文学論』の可能性
文学とは如何なるものぞ/漢学に所謂文学/左国史観/英語に所謂文学/世界の中の「文学」/心理学と社会学/焦点的印象又は観念/附着する情緒/全一的なものとしての文学表現/戦略としての非対称性/科学と文学/リュッカーの原子論/原子論への批判/「文学的真」の在り方
第五章 大学屋から新聞屋へ
朝日新聞への入社交渉/商品としての文学/「大新聞」と「小新聞」/商売としての新聞経営/日露戦争と新聞/日露戦争後の新聞/商品としての「人格」/新聞屋が商売ならば,大学屋も商売である
第六章 金力と権力
漱石と金銭/精神を買う道具/マルクスと漱石/資本と人間/労働力商品としての人間/『三四郎』における金銭の貸借/引越しと住宅費/小口当座預金通帳/生家を追われる妹/男を買った女/金銭と愛情/真珠の指輪の両義性/失われた指輪と紙の指輪/買われた生活/女を買う男たち/空洞化する日常/「高等遊民」の系譜/利子生活者の悲哀/金力と家族/命がけの跳躍
第七章 漱石の女と男
藤尾の死/男の基準/女の基準/男を選ぶ女/他者としての自己/女性嫌悪のディスクール/「迷子」と「乞食」/男同士の黙契/罪としての異性愛/かけがえのない存在/正体の知れない人/共倒れする男たち/すれ違いつづける夫婦/男としての父,男ではない夫/時代の中の男性性
第八章 意識と無意識
肉体と精神/意識の流れ/「意識の波」/「ばらばら」な「私」/「他人」としての「自分」/記憶と忘却/精神的外傷と記憶/記憶をめぐる意識と無意識
第九章 個人と戦争
帝国主義の時代/個性と文明/漱石と「自己本位」/ 五つの戦争/「軍国主義」と「個人の自由」
あとがき
岩波現代文庫版へのあとがき
感想・レビュー
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ころこ
まさにい
ken
masasamm
かしこ
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