岩波現代文庫<br> 漱石を読みなおす

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岩波現代文庫
漱石を読みなおす

  • 著者名:小森陽一【著】
  • 価格 ¥1,188(本体¥1,080)
  • 岩波書店(2024/12発売)
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  • ISBN:9784006022792

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内容説明

19世紀末から20世紀初めの戦争が続く時代に,「個性」という絶対的差異を自覚し,孤独な闘いに生きた漱石.漱石の諸作品と生涯について,新たな視点からたどりなおす.通説とは違った漱石の「個人主義」の新しい読み方を切り開き,現代の視点からその魅力を鮮やかにくみあげた「再入門書」.文庫化に際し,最終章を大幅に改訂.

目次

第一章 猫と金之助
はじめての小説/引き裂かれる世界/類の対立と個の対比/本名と筆名/吾輩は金之助である/捨て猫と捨て子/捨てられた拾われ猫/本当の親は誰/「爺婆」と「両親」/塩原と夏目/「塩原」から「夏目」へ/自分で自分を命名する
第二章 子規と漱石
「漱石」という号/誤ちとしての名/命名者としての子規/子規の手紙/「殺して仕舞った」/切実さへの感受性/「気の毒」という感触/平民と士族/「文学」的盟友関係/「送籍」と従軍/子規の死
第三章 ロンドンと漱石
留学の命令/高等教育の拡充/帝国主義時代のイギリス/ヴィクトリア朝の終焉/英語にして英文学にあらず/不在の英文学/「書物丈でも買へる丈買はん」/池田菊苗との出会い/「文学」の外部/「進化論」的人間観/「退化」= ディジェネレーションの恐怖/不適者の排除と切捨て/「黄禍論」の時代/「自己本位」の孤独な闘い/「漱石」の小説と「退化論」の影
第四章 文学と科学――『文学論』の可能性
文学とは如何なるものぞ/漢学に所謂文学/左国史観/英語に所謂文学/世界の中の「文学」/心理学と社会学/焦点的印象又は観念/附着する情緒/全一的なものとしての文学表現/戦略としての非対称性/科学と文学/リュッカーの原子論/原子論への批判/「文学的真」の在り方
第五章 大学屋から新聞屋へ
朝日新聞への入社交渉/商品としての文学/「大新聞」と「小新聞」/商売としての新聞経営/日露戦争と新聞/日露戦争後の新聞/商品としての「人格」/新聞屋が商売ならば,大学屋も商売である
第六章 金力と権力
漱石と金銭/精神を買う道具/マルクスと漱石/資本と人間/労働力商品としての人間/『三四郎』における金銭の貸借/引越しと住宅費/小口当座預金通帳/生家を追われる妹/男を買った女/金銭と愛情/真珠の指輪の両義性/失われた指輪と紙の指輪/買われた生活/女を買う男たち/空洞化する日常/「高等遊民」の系譜/利子生活者の悲哀/金力と家族/命がけの跳躍
第七章 漱石の女と男
藤尾の死/男の基準/女の基準/男を選ぶ女/他者としての自己/女性嫌悪のディスクール/「迷子」と「乞食」/男同士の黙契/罪としての異性愛/かけがえのない存在/正体の知れない人/共倒れする男たち/すれ違いつづける夫婦/男としての父,男ではない夫/時代の中の男性性
第八章 意識と無意識
肉体と精神/意識の流れ/「意識の波」/「ばらばら」な「私」/「他人」としての「自分」/記憶と忘却/精神的外傷と記憶/記憶をめぐる意識と無意識
第九章 個人と戦争
帝国主義の時代/個性と文明/漱石と「自己本位」/ 五つの戦争/「軍国主義」と「個人の自由」
あとがき
岩波現代文庫版へのあとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

28
従来の時代精神を仮託したテクスト読解や文献学的手法ではなく、カルチュラル・スタディーズ的な「読みなお」しになっています。政治性が強く、価値の押し付けの部分もありますが、全体を通して見事としか言いようのない本です。前半は唯物的な着眼点から従来の漱石像を解体しています。池辺三山との朝日新聞入社のやりとりに、日清戦争後の報道の均質化による「小新聞」としての生き残りを模索する姿が描かれます。平民出身の漱石と士族出身の三山の微妙な関係は、既にその頃には衰退の運命にある「大新聞」に所属していた子規との若き日の対立や後2020/11/06

まさにい

7
『吾輩は猫である』がこんなに深い読み物だったとは思わなかった。漱石が朝日新聞に入った当時の朝日新聞と日露戦争の関係、日比谷焼打ち事件に朝日新聞が影響を及ぼした関係は知らなかった。これは、商業ジャーナリズムの限界を示している。この本、只者ではないなぁ。読んで良かった。2023/06/11

ken

3
漱石の出生、漱石と正岡子規、漱石とロンドン留学、漱石と性別などなど、いろんなテーマによる論考が収められていて、作品を読む上で参考になる1冊。明治時代がどんな時代なのかを踏まえた上で、漱石の人生や作品について触れるので、作品が生まれた必然をしっかりと理解することができる。改めて、漱石という人間と、その作品の魅力について考えさせられた。2021/08/06

masasamm

2
漱石研究の第一人者小森陽一氏の漱石研究入門書。わかりやすい部分、刺激的な部分が多くあり、勉強になります。一方では読みすぎではないかと思われる部分もあります。しかしそれは私自身の読みの甘さからそう思われるのかもしれません。この本自身も、漱石も何度も読むことが要求される本です。2023/07/29

かしこ

2
金之助の金はお金の金。漱石がいかにお金に苦悩したか、その面から漱石を読み解いてました。子規と漱石の関係も、否定し合いながら、アイデンティティの危機や死の淵では求め合い、苦しさが溢れ深いです。2016/12/28

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