内容説明
神剣なきまま即位した“すめらぎ”の秘めたる想い――。小さき者が小さきままに集い、大輪の花となる。日の本をそんな国としたい。菊を愛した後鳥羽院と刀鍛冶たちとの絆を描く、心震える連作短篇集。新たなる神剣を作るべく、後鳥羽院によって各地から集められた、則宗、延房、久国ら刀鍛冶(御番鍛冶)。共に剣を鍛えていくことで、“すめらぎ”たらんとする院の想いを知った彼らは、それに応えようとするのだが……。承久の乱を起こして鎌倉幕府に破れ、この国の政を武家のものにしてしまった「暗君」とされる後鳥羽院の真の姿に、刀鍛冶たちの視点から迫った歴史小説。『利生の人 尊氏と正成』で第12回日経小説大賞を受賞し、『あるじなしとて』で第12回日本歴史時代作家協会賞の候補となった著者渾身の最新作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mitubatigril
9
後鳥羽院のイメージ一新 刀鍛冶にいわゆる名人と呼ばれ 今では国宝と呼ばれる刀の作者が治天の君と呼ばれる方と当時はただの職人と呼ばれる人が交わる事の理由などが目線が新しくてびっくりの連続でした。 作者さんの作品は特徴的な感じが何故か心ゆすられる タイトルと作者名で読むぜと思って正解でした。2025/01/30
イカカイガカ
1
鎌倉政権と対立し、敗れ、隠岐の島に流された後鳥羽上皇が、殊に刀剣を愛した方であったという事を最近知った。本作は、まさに後鳥羽院の刀剣への思いと刀鍛冶との交流、そして院の思いを汲んだ刀鍛冶たちの奮闘が描かれている。良き為政者足らんとする情熱と、理想通りにいかない焦燥からくる懊悩が、自らも刀剣造りに取り組んだ後鳥羽院の刀に反映するかのように描かれる。刀剣造りの大槌で打ち込む際に飛び散る火花のように、幾ばくかの悲しさと清々しい綺麗さを感じさせられる小説だった。2025/08/07
chuji
1
久喜市立中央図書館の本。2025年1月初版。初出「わいわい歴史通信」第六号2022年4月~第九号23年1月。大幅に加筆・修正。後鳥羽院と四人の刀鍛冶譚。四編の連作集。天津さんの著作は三冊目の読了です。2025/01/14
止水
0
後鳥羽院の御番鍛冶伝説を題材としつつ、刀剣や刀鍛冶はもちろん、天皇や治天、三種の神器、さらには皇室の菊花紋まで多岐にわたるテーマを含んでおり、それがドラマとしっかりと結びついていて面白く読んだ。毀誉褒貶相半ば、というよりは悪評の方が勝るであろう後鳥羽院が、読むうちにだんだん可愛らしく思えてくるのだが、それでもどうにもならなかった彼のコンプレックスが傷ましい。また、解明されていない古刀期の日本刀の製法を説得力のある形で表現しており、登場する鍛冶達の個性と相まって、職人小説としても非常に楽しめた。2025/01/16




