ちくま文庫<br> ヤンキーと地元 ――解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち

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ちくま文庫
ヤンキーと地元 ――解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち

  • 著者名:打越正行【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2024/12発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480439840

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内容説明

生まれ故郷が嫌いだと吐き捨てるように言った、一人の若者。その出会いを原点に、沖縄の若者たちをめぐる調査は始まった。暴走族のパシリとなり、建設現場で一緒に働き、キャバクラに行く。建設業や性風俗業、ヤミ仕事で働く若者たちの話を聞き、ときに聞いてもらう。彼らとつき合う10年超の調査から、苛酷な社会の姿が見えてくる──。補論を付した、増補文庫版。

目次

はじめに/下世話な冗談/「電話代がおそろしかった」/あまりに日常的な暴力/第一章 暴走族少年らとの出会い/1 広島から沖縄へ/「メンバーにしてください」/駐車場で飲み明かす/暴走族のパシリになる/響き渡る爆音──沖縄調査一日目/ゴーパチという舞台/卑猥なうちなーぐち/2 拓哉との出会い/「すぐにでも結婚したい」/「名護はいいけど地元は嫌」/はじめての土地で彼女をつくる/ナンパをする理由/3 警官とやり合う/職務質問を受ける/警官と交渉するスキル/携帯サイト「中部狂走連盟」と写真アルバム/調査の前に信頼関係を築く/第二章 地元の建設会社/1 裕太たちとの出会い/「俺、解体屋しかできない」/鉛筆を「重い」と言う裕太/地元で有名な「暴れん坊」、太一/2 沖組という建設会社/沖組を立ち上げる──康夫社長の生活史/会社経営の「最強のタッグ」/ピンチを切り抜ける/「給料支払い遅れなし、定額」/3 沖組での仕事/初日の朝/Pコン外しと材料出し/最小限の力で資材を運ぶコツ/材料出しの二つの方法/型枠解体屋の仕事/現場監督vs.従業員/右折をめぐるバトル/朝会での作業確認/怪我の防止と暴力/共同作業を乱す者への暴行/効率よりも上下関係/「時間の話はするな」──一人前への道/現場に鳴り響く音と段取り/事務所の近寄りがたさ/4 週末の過ごし方/送別会の夜/先輩たちとのギャンブル/ナンパから、キャバクラ通いへ/ダービーレースと忘年会/仕事と週末と夜の世界/5 沖組を辞めていった若者たち/「ズルズルきてしまった」──仲里の生活史/達也への暴行、そして離職/「今の若いのはあまえてるよ」──よしきの生活史/達也のスロット通い/仲里の見立て/その後の仲里、達也、慶太/浩之への暴力/しーじゃたちの仕打ち/「儲けて、金、持ってるのが勝ち」──宮城の生活史/その後の沖組/6 沖組という場所と、しーじゃとうっとぅ/第三章 性風俗店を経営する/1 セクキャバ「ルアン」と真奈/2 「何してでも、自分で稼げよ」──洋介の生活史/地元での理不尽な暴力/キセツ先での「屈辱」/「上に立つ」という決意/3 風俗業の世界へ/沖縄の性風俗業界/セクキャバ受付からオーナーへ/風俗店の経営者になる/「学歴なんかより、友だち」/4 「足元を見る」ということ/「ヤクザ」への対応/越えてはいけない一線──警察への対応/女の子を雇う/「地元つながり」を適切に使う/5 風俗経営をぬける/女性スタッフへのサポート/杏里と真奈/6 性風俗店の経営と地元つながり/第四章 地元を見切る/1 地元を見切って内地へ──勝也の生活史/2 鳶になる/3 和香との結婚、そして別れ/4 キャバクラ通い/5 地元のしーじゃとうっとぅ/6 キセツとヤミ仕事/7 鳶を辞め、内地へ/第五章 アジトの仲間、そして家族/1 家出からアジトへ──良夫の生活史/2 「自分、親いないんっすよ」──良哉の生活史/3 夜から昼へ──サキとエミの生活史/おわりに/あとがき/補論 パシリとしての生きざまに学ぶ──その後の『ヤンキーと地元』/1 パシリとして生きる/失敗を繰り返すパシリ/剛さん──沖組でなぜか長く働いている人/パシリのプロフェッショナル/2 パシリとしての参与観察/参与観察について/巻き込まれること/部外者でなく、内部関係者になること/調査における利害関係/「つかえない内部関係者」になること/金銭授受について/巻き込まれる調査者の限界と留意点──ホモソーシャルなつながりから書くこと、つながりを書くことについて/他者の人生を書くことへの責任の取り方/3 フィールドへ/誰もがなしうる特殊な手法/既存の知のあり方を乗り越えるために/解説 打越正行という希望 岸政彦/初出一覧/調査実施一覧/生活史インタビュー・実施記録/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

venturingbeyond

55
P.ウィリス『ハマータウンの野郎ども』との出会いから社会学を志すようになった打越先生が、下層男性社会の仕組みと論理を「パシリ」という絶妙な参与観察者のポジションから、本家に勝るとも劣らない活き活きとした筆致で描き出した名著。学知を世に問う同業者やその学知に学ぶ大学生、そして我々一般読者に対して、彼らと現実世界でほぼ接点を有することのない「沖縄」の「下層男性」の若者文化や労働者文化が内包する「(彼らにとっての)合理性」が著者の粘り強い調査によって示される。解説の岸先生の評価通りのエスノグラフィの大傑作。2025/01/08

はっせー

48
本書は打越さんが沖縄の若者にインタビュー・フィールドワークした内容をまとめた作品となる。ジャンルとしては社会学に分類される!まず驚くのは調査対象。沖縄の若者といってもヤンキーと呼ばれる人たちに調査をする。しかもそのヤンキーのグループにパシリとしていれてもらい彼らと同じ目線で過ごした。打越さんのすごさについては、解説で岸政彦さんも語っていた。その中でも触れられていますが、打越さんは単に若者の実態を調査しただけではなく、なぜこのような環境になったかを沖縄の歴史を紐解きながら分析している。ルポではなく社会学。2025/07/22

阿部義彦

23
文化人類学的アプローチとして、参与観察という方法があります。調査の手段として、集団に接触し、信頼関係を構築しその関係を維持して聴き取りを行うというものですが、沖縄の若者達に対する著者の打越さんが取った具体的な方法とは、族のパシリになる事だった。「メンバーにしてください」とかなり年上のオッサンが頼む訳。最初は私服の警察官と勘違いされて苦労しますが、次第に打ち解けて、元暴走族のリーダーにも気に入られ、「ステッカーいるでしょ」と暴走族の名前を網羅したのを原付バイクに貼り付けそこからの事は、ぜひ読んでください。2024/11/22

kuroma831

22
気鋭の社会学者による沖縄のヤンキー社会へ深く潜り込んだエスノグラフィー。参与観察は調査対象者とのラポールをいかに築くかが根幹だが、著者は沖縄のヤンキー社会にパシリとして参加し、建設会社での労働も含め、暴走族や風俗店経営者などと深く付き合い、「地元で生きる」彼らの生活史を描く。「沖縄は貧しくとも素朴で幸せな暮らしをしている」とのイメージは本土からの押し付けに過ぎないと気付かせるリアリティがすごい。本土と沖縄の多重搾取の関係を前提としつつ、地元で生きる彼らは貧困と暴力の中で暮らす。2024/12/28

原玉幸子

18
敢えて主題を挙げれば、若気の至りと、その「どん底の人々」への社会学的用語で言う「参与観察」のルポタージュ。私は、成人式で暴れる若者をTVのニュースで見ても厭な感情しか起こらず、YouTubeでのBreaking Downなんかも酷い(「なら、観るなよ」とは、いつも思うこと)。我々は、知らずには始まらないとは言え、知ってどうするのだ。手を差し伸べるのか、それとも、政治が悪いと叫ぶのか。ルポとの観点で言えば、取材対象の当事者が言語化していないことでは、「痛い」と言わざるを得ない。あ~あ。(●2025年・秋)2025/08/17

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