内容説明
第9回カクヨムWeb小説コンテスト〈エンタメ総合部門〉特別賞受賞作
1992年8月、9歳の少年トビーは家族旅行中のフロリダでハリケーンに遭い、視力を失った。両親は変わらぬ愛情を持って接するが、トビーの心は傷ついて孤独のまま。彼の友達は、父がくれた仔犬のハミングだけだった――。ある夏の日、トビーはハミングとの散歩中に近所の森で古い鍵を拾う。持ち主はジャンナ・グッドスピード。酒に煙草にギター、見透かしたような言動をする、いけすかない無法者。はじめは仲違いを繰り返しながら、ふたりはだんだん距離を縮めていく。けれどもジャンには、誰にも触れられない秘密があって……。
人は誰しも、ある意味盲目である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
秋田健次郎(ずんだ文芸部)
20
自分の中にある良心や善良さを具現化するときっとこんな物語になる気がするし、そうであって欲しい。あまりに柔らかで暖かくて、優しく抱きしめたくなるような小説でした。海外小説としか思えないほどナチュラルな文化描写や、タイトルにある「ハミング」の意味など、本作の魅力は枚挙にいとまがない。人生が確実に良い方向へと向かっているという希望に浸らせてくれると同時に、変えられるのは自分自身だけであることも教えてくれる。いつか私にとっての暗闇が訪れた時に本作を読み返せるよう、そばに置いておきたい一冊です。2024/12/22
かつどん
8
海外文学を思わせるナチュラルな情景・人物描写だが、基本的には家族や友人、隣人間の愛や思いやりが隅々にまであふれていて、老若男女の万人に訴えるものがある。キリスト教的な見方とアメリカ先住民の教えとの融合とがひとつの軸にもなるが、それ以上に、個々の『真実』を尊重しあうことの大切さを訴えている気もした。人はどんなに『離れて』いても、根気よく繋いでいけば必ずつながることができる、というメッセージがタイトルにも込められているのでは。2025/01/06
斜道
5
一気読み。海外文学を読んでいるみたいなのに読みやすくて不思議な感覚だった。ハミングの由来、愛があるなと思った。拾った鍵の持ち主であるジャンがトビーの成長の鍵になる。初めて会ったときからジャンは軽口のようだけど大切なことを言ってくれている。サラの父親にトビーが語りかけるシーンは胸が熱くなった。失ったものばかりに目を向けていると他の大切なものが見えなくなってしまう。序文を思い出して感動した。英文タイトル"Seven Letters of Light"も凄くいいな……まさにそう。2025/03/20
遠宮にけ❤️nilce
5
不幸な事故で視力を失う主人公。周囲の大人たちの根気強い支えがあるも、理不尽な現実に対する苛立ちはかえって募るばかりで、そんな自分にも嫌気がさすの悪循環。ジャンという不思議な青年と出会ったことをきっかけに、主人公の心にこれまで決めつけてきた相手の多面的な姿が見えてくる。「大人」という揺るぎなく思えたものに、自分と変わらない柔らかな子供の部分を見出すような。彼らもさまざまな感情を時に持て余しながら、愛ゆえに主人公を抱えてきたことを知るような。痛みと愛を知る彼が大切な人のために起こした行動にグッときました。2025/02/05
蜂賀三月
5
ハリケーンで視力を失った少年の物語。海外の作家が書いているような筆致です。文章はわかりやすく、舞台が生活様式の違う海外なのに、はっきりとその場所の映像や人々をイメージさできる。少年トビーの障がいの受容過程を通して読者に伝えられたメッセージはとてもあたたかく、自分にも周囲の人間にも優しくありたいと思える読後感だった。階段を上るトビーの描写は同時に人間として成長している瞬間でもあり、涙を誘う。素晴らしい作品でした。2025/01/07
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