内容説明
引退馬を問うことは、競馬の未来を問うことだ。
ターフを去った競走馬は、その後どこへ行くのか――?世界で最も馬券が売れる国・日本が抱える「引退馬」という産業課題。我々にとって馬とはどのような存在であるべきか?引退馬を追った映画「今日もどこかで馬は生まれる」の監督を務めた、競馬を愛する著者が、誕生から現役生活、セカンド・サードキャリア、肥育の現場まで、サラブレッドの”命がけ”の一生を、7年におよぶ現場関係者への綿密な取材を通して明かす。繊細で複雑な課題の核心を丁寧に、かつ情熱をもって世に問う、至上のノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐藤(Sato19601027)
84
三冠牝馬リバティアイランドに続き、名牝メイショウマンボも急死した。しかし、このように報道される競走馬は、実は少ない。多くは、そのまま姿を消すか、一旦、乗馬用に飼養された後に用途変更の末、行方不明=廃用になる。当該本では、統計数値を挙げて、サラブレッドの行く末を解説している。元調教師の角居勝彦さんが養老牧場を開設したことは、ニュースで知っていたが、競走馬の数からいって、全ての馬が、競走生活終了後に、のんびりと牧場で過ごせる筈もない。馬を愛する多くの人は、余生が保障できる世界を築こうと頑張っている。2025/05/02
りんだりん
22
私の初めての競馬はライスシャワーが天に召された宝塚記念だった。ビギナーズラックに恵まれ嬉しかった一方でレースで転んだ馬が安楽死になることに衝撃を受けた。競馬にはまり込むきっかけにもなった。その頃、NNNドキュメントで「サラブレッドの丘が泣いている」という放送を観た。自分が育てた馬が売れ残ってしまい、初めて食肉の競りに連れてきた牧場主に密着していた。相場が数千円〜と聞いた時の主の「そんなもんかい」とつぶやいて黙り込んだ時の悲しげな瞳が忘れられない。あの時代から少しずつだが改善に進んでいることがわかった。★32025/01/02
てん06
18
子供の頃にテレビで見たハイセイコーから、ゲーム「ウマ娘」を経て、最近は競馬場にも足を運ぶ。競馬雑誌を見ると登録抹消された馬の情報があるが、毎回すごい数であることに驚く。その後のサラブレッドの行方について触れるのがタブー視される部分も取材し書かれている。競走馬が生まれてからどのような生涯を送るのか、そこへの人間の関わり、現在の競馬を取り巻く状況が非常にバランスよく書かれていると思う。ただ残念なのは最終章の内容がやや具体性に欠け精神論的になってしまっていること。それを差し引いても非常に面白い。2025/03/11
Tomomi Yazaki
15
いつも思う疑問。毎年デビューする馬は七千頭あまり。つまり同じ数だけ引退する。その内乗馬はほんの僅か。ましてや種牡馬や繁殖牝馬なんて夢のまた夢。あとは行方不明。引退後は追うなと言う暗黙の了解。都市伝説と思う人もいる。本書はその闇の蓋を開けタブーを詳らかにする。そこにあるのは悲哀か怒りか、それとも諦めか。買う時はウン千万円。売る時はキロいくら。最近はサラブレッドの方が脂身が少なくヘルシーということでよく売れるそうです。でも、牛や豚と何が違うのかと問われても、返す言葉を持ち合わせていないことに気づきました。2025/01/10
フク
11
〈引退馬問題とは、家畜として生まれたのに、それを越えた存在となり、その後また家畜として処理されることに対する、競馬ファンを中心とした人々の違和感によって生まれている問題だ〉 図書館2025/01/18