内容説明
ほんとうに人を斬ったのか──幕末から戦前までを駆け抜けた、日本美術家の生涯。近代美術のすごみが横たわる圧巻の長篇時代小説!
東京美術学校の発足に携わり、帝国博物館でも要職を務めるなど、「日本美術」の目利きと称された下垣内邦雄が、関東大震災、金融恐慌、世界恐慌に襲われたあとの1931年、歴史の大きなうねりの中で亡くなった。思い起こされるのは、ある新聞記者による4年前の単独取材だった。美術に関する意図とおりの質問のあと、下垣内教授は自らの半生について語り始める。「俺は人を斬ろうとしたことがあるんだよ」。凡百の出世物語とは似ても似つかぬ、幕末活劇とはまったくちがう話に、記者はかっさらわれたのだった……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
180
青山 文平は、新作中心に読んでいる作家です。 幕末から戦前の昭和の時代までを駆け抜けた、日本美術家 下垣内邦雄の生涯、予想外の展開で楽しめました。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00004031932025/02/03
シナモン
107
美術と人斬り。到底繋がりそうもない2つが見事に結びついた一冊だった。昭和初期から江戸末期までを美術の視点で俯瞰できた感覚。こういう見方もあるのかと新鮮だった。中盤までやや読みにくく感じたけど「中里吉郎」が登場後、一気に物語に引き込まれた。青山文平さん、追いかけたい。💘何をどうしてよいかわからないけれど、それでも人はなにかをどうにかしなくてはならない。 2025/02/10
のぶ
91
青山文平さんだから時代小説だと思い込んで読み始めたが、雰囲気がいつもと違う。本当に時代小説?と思いながら読み進めたら、やっぱり時代小説だったが、今まで読んだことのないタイプの小説だった。導入部分、若い新聞記者が当代きっての日本美術の目利きと評される下垣内邦雄教授に取材します。時に1927年。そこから、下垣内が体験した幕末期の様相が語られていく。そこで語られるのは驚きに満ちた、読み応えある邦雄の半生記だった。緻密な構成で気づかれていく下垣内邦雄の物語。新鮮な感覚で味わった時代小説の名品だった。2025/01/17
たま
79
青山さんの幕末もの。とても楽しく読んだ。語り手が理詰めで自分の行動を説明するのが青山さんの時代小説の特徴だが、この本の語り手邦雄はまず多摩近郊の豪農である兄昌邦の行動を説明し(1)、それを受けて自分が徘徊浪人を斬ろうと旅に出たこと、そこで出会った人を語る(2)。兄も邦雄も〈変人〉と言えば言えるが実にすっきりした人間で(ほかの登場人物も好漢ばかり)、時代の変化を先取りする力がある。幕末と言えば新選組や西郷や竜馬がまず浮かぶが、江戸の剣術家が西洋美術の専門家として道を切り開く、意想外の展開が新鮮だった。 2025/03/18
TakaUP48
73
東京美術学校の発足に携わり、帝室博物館でも要職を務めた「日本美術」の目利きと称された下垣内教授の美術に触れる幕末期の話。『ガゼット・デ・ボザール(美術の雑誌)』を手にした下垣内邦雄は、日本人とフランス人の美の捉え方の違いをアダムから聞く。「日本人は美しいものをつくり、愛でるという点において世界でも類稀なる才能を発揮する。でも、その先がない。なんで美しいのか、どのような構造を持っているのかなど、美しさの神髄の探究に情熱を燃やすことがない」。兄を超えようと狂気の旅を続けるのだが、前置きが長すぎ?良い頃合い?2025/08/15
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