内容説明
「チグハグさ」が魅力の寺山修司の才能、小林秀雄が漏らした死の真実、墓場までイメージを背負って去った八千草薫、徹夜麻雀で見せた秋山庄太郎の悪ガキ振り、瀬戸内寂聴との長く不思議な縁、徳大寺有恒がヤクザ映画の主人公のように放った一言、追放者である人間の印を「刻印」された三木卓――。甦る昭和の思い出46編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
86
時間と共に人々の記憶は略歴という類の文章に纏められ、生きた記憶は消える。その人達の呼吸の感じ迄を再現したいと願った。そんな五木氏の新刊。先ずはどの方についてもその息吹と雰囲気と親しみが五木氏らしい描き方で浮かんでくる事から一気に読了。中でも僕には、徳大寺有恒・城山三郎・大原麗子・浦山桐郎・桃山晴衣・井上靖各氏の章が印象的。例えば大原麗子氏につき、仕方ないから若い大学生の膝上に乗っかり観て、興奮しちゃったと喋ったと記す五木氏の眼が、後を見通す様な独りで死ぬのではないかと見通す五木氏の眼もそれらを記す筆も良い2025/06/08
nonpono
47
久しぶりの五木寛之。「戒厳令の夜」の映画は恐ろしく、「青春の門」では炭鉱と売血を教えてくれた。「大河の一滴」では恐山のカラスを教えてくれ、わたしは20代で恐山イタコ祭りに行けた。満州から引揚者の先生のデラシネ、根無草の思想が好きである。出て来る方々がみんな大家であるが、偉そうじゃない、何気ない一言がゆえに響くんだ。あの時代の麻雀人脈も凄い。圧巻は寺山修司の「ぼくはあなたよりも、あなたが読んでいる本に興味があるんだ」が寺山っぽい。よく有名人が自分の本棚を公開するがわたしは無理。ある意味裸より恥ずかしいかも。2025/03/22
ぽんぽこ
4
「なーんにもしていません。ただ絵を描いているだけなんです」と言ってのける野見山さんがとてもかっこいい。息をするように絵を描いて、それを「なんにもしていない」ことと同義なまでに一体化する。五木寛之さんの周りに面白い方がたくさんいらっしゃって楽しそうです。鏡花賞と教科書、言われるまで似ていると気づきませんでした。きっと五木さんも聞いたときに「ふふっ」ってなったことでしょう。ほとんどの方が故人というのが寂しいですが、私もこの方々とお話してみたかったです。無理そうだけどなぁ。2025/02/12
Go Extreme
4
小林秀雄ー人間は生まれた時から、死へ向かってとぽとぼ歩いていくような存在です 八千草薫ー激しい豪雨ではなく日本らしい雨期になって欲しいです 深作欣二ー嘘をつくなら壮大な嘘をつこう 芦田伸介ー人生、思い通りにはいかないものです 林達夫ー人は、その土地に根ざしたもののほうが強いと思っているが、そうではない。移植されて育った植物のほうが強い場合が多いんだ 吉岡治ーいまは童謡の時代ではないのかもしれない 浦山桐郎ー原作をどう毀すか、ということ 加藤唐九郎ー男なら必ず振り向かなきゃ駄目だ2025/02/07
tecchan
2
著者がこれまで会った人との思い出やエピソードを心に残った言葉ともとに紹介。46人との思い出はまさしく昭和史そのもの。2025/07/27