内容説明
大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――戦下の昭和18年、婦人化粧品の製造・販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁ぐことになった陸軍少将の娘、中久世美禰子。だが夫は軍医として出征することになり、一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残された。戦局が悪化の一途をたどる中、大鞠家ではある晩“流血の大惨事”が発生する。真夜中に闊歩する赤毛の小鬼の出現、酒樽の死体と、怪異は続く。正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ。第75回日本推理作家協会賞および第22回本格ミステリ大賞受賞作。/解説=杉江松恋
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
317
大戦時の船場を舞台としたことで、現代ではなかなか演出できない横溝作品のような雰囲気を醸すことに成功。事件自体はそれほど凄惨なものではないので、本家に肉薄とはいかないが、これはこれでアリだと思う。芦辺作品はあまり読んでいないので確かなことはいえないが、鮎川賞でデビューして未だ『リラ荘事件』が創作の軸にあるのかと感じる。少し作り物感が強すぎるトリックの数々も好みがわかれるところかと思うが、ポッと出の探偵が、読者を置き去りにしながら、さらっと事件を解決していく辺りが特にリラ荘。こういうところがマニア向き。2025/04/18
森オサム
39
第75回日本推理作家協会賞&第22回本格ミステリ大賞W受賞作。戦中の大阪を舞台に商家で起きる連続殺人、現場にいてる目の前で次々やられるんなら名探偵とは呼べんやろ、と思ったら、名探偵登場!はそんなタイミングでしたか(笑)。作中には古典名作探偵小説が7作引用されています。これらの作品とのメタ的な感じでの重なり方も本作の特徴ですが、戦争の悲惨さ、理不尽さへの怒りも感じますし、船場商家の独特な雰囲気を詳細に描いているのも興味深い。労作で良作、著者代表作。ですが、本格としては犯人特定のロジックが若干弱い様な気も…。2025/06/08
bayashi
20
面白かった。明治の終わりごろから終戦にかけての大阪船場商家を舞台にした本格ミステリ。一部人間を記号的に扱う商家文化と終戦付近の誰がどうなってもおかしくない時代背景、このあたりってメタ的に本格ミステリ作品にそのまま通ずる、、と思うんだけどそれはさておき、きちんとした作品世界からなる単純な話の面白さ、それと本格ミステリとしての面白さが渾然一体になってるありがたい作品。実際この時代の倫理観ってどんなもんだったんだろうか?作品内は気丈でタフな人らばっかりだったが。船場吉兆の船場か!と読後に気づく。2025/09/10
ケイジ
17
戦前戦後の大阪船場の雰囲気を感じることが出来ました。2025/03/14
Urmnaf
10
タイトルからしていかにもな、古式ゆかしいミステリ。大阪・船場の化粧品商の一家で起きた連続殺人。それもおどろおどろしい趣向が満載。誰が頼んだのかわからない探偵が乱入したり、そいつが全裸で殺されたり。一歩間違うとギャグにしかならない展開も。人によっては馬鹿馬鹿しくて本を置いちゃうかも。それを楽しめるのがミステリマニアなんだけど、すべての趣向にスッキリ合理的解決か、というとやや疑問あり。雰囲気に浸るが吉。2025/07/07




