内容説明
今日の「韓国男子」たちを呪縛する、韓国近現代の「男なら…」のこじれの歴史を明らかに。フェミニズムへの応答としての韓国男子論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイティ
34
さすがのみすず、とてもしっかりした良書でした。築かれる男性像が現実との乖離に不利益を受けた人は、防御としての自己卑下が過剰になる。データで見ると賃金や犯罪被害率などでは圧倒的に女性が弱者だが、男性の持つ被害者意識も嘘ではない。戦う前からの敗北、若さの搾取と大人への不信感に揉まれ、狭き門の競争をくぐり抜けるため女性は努力し、男性は世代論と自己憐憫にはまる。そうなると郷愁になだれ込み、かつての尊敬されケアされた権威を求めるという。世の中の不確実性とグローバル化で変化していくだろうから、今後も注視していきたい。2025/02/01
katoyann
18
2018年刊(訳書は2024)。新進気鋭の社会学者が韓国男性の在り方を歴史的に考察した本。韓国の男性性に強い影響を及ぼしているのは兵役である。軍隊の中で、思想の自由を制約され、ホモフォビックで性差別的な価値観に染まりやすくなるという。IMF通貨危機が雇用の不安定化を招き、経済的に不遇といえる生活を余儀なくされる男性がインターネットを通じて、女性嫌悪的で性差別的な言動を繰り返しているという分析が興味深い。新自由主義の犠牲者が差別主義に陥っていくのは日本でも見られる現象だ。参考になる一冊です。2025/10/14
えりまき
14
2025(176)韓国で生まれ育った「男性」の生き方について。分かりやすい文章でとても勉強になりました。男性の生きづらさから生じる、女性嫌悪。「人間」として、気持ちよく生活したい。 2025/07/22
みさと
5
韓国の男性社会学者による、男性性の形成という切り口から見た韓国近現代史にしてジェンダー社会文化論。韓国でジェンダー暴力への告発が相次いだ時代を背景にジェンダーを女の問題と考える風潮に対して男たちが自らの男性性と向き合うために書かれた。「誰かを抑圧することなしにひとりの主体として、また、他人と連帯しケアを行う者として生きていけるのか」を問うて。女性を支配の対象と見なす韓国の閉塞的男性性が、植民地支配を通じて日本から入ってきた近代男性性・軍事体制・戸主制度を源流の一つとしているため、日本も無縁ではいられない。2025/09/02
すのさん
5
男性が女性への無自覚的な依存と抑圧を通じて自己を形成するという、自己形成のあり方に問題があると強く思う。これは戦時中の国家統制や資本主義により社会の根底に根付いてしまった思想ではないかと考えられ、女性をケアの役割に押し込めることで、男性を前線で戦わせるという構図は韓国だけでなく、日本を含む多くの社会に共通するものだろう。韓国の国家としての被支配経験、現代の徴兵制は韓国の男女差別と男性性形成に日本と違った要素を持たせている。感情史からの分析が、韓国男性の男性性の挫折と現在の空虚感を生々しく描き出している。2025/07/30