内容説明
日本近代建築の雄、妻木頼黄(よりなか)。幼時に幕臣の父を疫病で亡くし、維新後に天涯孤独となり、17歳で単身渡米。コーネル大学で学んだ異才は、帰国後にその力量を買われ、井上馨の「官庁集中計画」に参加。闇雲な欧化ではなく、西欧の技術を用いた江戸の再興を。そう心に誓う妻木は、大審院、日本勧業銀行、日本橋の装飾意匠他、数多くの国の礎となる建築に挑み、やがて、この国の未来を討議する場、国会議事堂の建設へと心血を注ぎこんでいくが……。彼と交わった人々の眼差しから多面的に描き出す、妻木頼黄という孤高の存在。その強く折れない矜持と信念が胸を熱くする渾身作!
目次
第一章
第二章
第三章
第四章
終章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
piro
43
明治時代、大蔵省臨時建築局で議院建築などに従事した建築家・妻木頼黄(つまきよりなか)を中心に綴られる物語。明治の建築家たちの熱い想いに、こちらも心が熱くなる一冊でした。明治建築界の三大巨匠の一人と謳われる(らしい)妻木の、美しい街並みへのこだわり、そして単に「箱」を作るのではなく、そこで働く人や訪れる人の気持ちまでも意識した設計を知り、建築家の仕事の奥深さを感じます。特に日本勧業銀行本店のプレゼンシーンは心が震えました。街並み全体の美しさを欠いた今の東京を見て、妻木は何と言うだろう?2024/11/09
seba
21
江戸改め東京のまちづくりにも尽力した建築家、妻木頼黄の生涯を描く。明治維新以来、西洋の風はあらゆる場に流れ込んでくる。建築技術分野も例外でない。その潮流の中で、彼が目指した日本のあるべき景観とは。また、彼は机上の設計ばかりでなく、人を直接指揮する仕事である施工管理や工事監理でも辣腕を揮う。特に第二章の、僅か半月で仮議院を建てるという嵐のような仕事の話は、一介の同業者としても興味深かった。「剛心」という言葉は終盤に登場。ただこの物語のタイトルとしては、言わんとする所はわかるものの何となくしっくりこなかった。2025/10/13
くるみみ
20
東京・日本橋の意匠が昔から好きで今の職場から歩いて行ける距離でもあり、装丁画を見てワクワクした。今まで誰が創ったのか調べもしなかったのにまさか木内昇さんの小説で知ることが出来るとは。486ページとボリュームはあるけれど登場人物それぞれの視点からの妻木頼黄との仕事が語られていく構成が後々(妻木の晩年)に効いてきてとても良かった。美意識と鋼のような意思を貫いた人が信頼のおける部下たちと今でも美しく日本らしさを感じさせる日本橋を創り、完成を見届けられなかった国会議事堂の設計をした人物の評伝、のような小説だった。2024/11/17
イシカミハサミ
19
建築が嫌いだった。 もう少し穿つと建築家が嫌いだった。 いまでも別に好きではないけれど。 考え方が少し変わる契機になったのは、 ウィリアム・メレル・ヴォーリズを主人公にした 門井慶喜さんの「屋根をかける人」だった。 本作の主人公、妻木頼黄も建築のための建築をする人だった。 景色を造る人だった。 “嫌い”なのは建築家ではなく、建築よりも名を遺そうとする 自称建築家だったんだと気づいた。 ラストシーンはずっとかみしめていたい素晴らしさ。2024/11/09
Y.yamabuki
18
妻木頼黄は辰野金吾と同時代の建築家。妻木は米国帰りではあるが、単に西欧を真似ただけの街は好まない。新しい技術を取り入れながら、日本の風土にあった建物を造ることを目指した。今で言うコンペを好まなかったのは、技術を競う余り周りの風景との調和を欠いてしまうことを危惧したからのようだ。しかし日本人は最近になって、やっとこのことに気付いたようだ。景観に配慮して様々な規制が設けられるようになった。2026/03/23
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