内容説明
結婚は「始まり」に過ぎない。今も昔も――
「好きでもない女と結婚するのは絶対に嫌だ」「自分たちは宮家に生まれて、あれこれ苦労した」「あの女王さまでは、子どもをお産みになることは出来ないでしょう」――。
さまざまな立場に葛藤する皇族を描いた5つの短編には、読む者を圧倒する”心の内”が綴られる。これまで描かれたことのない、衝撃の短編集。
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妹の友人に恋焦がれ、ようやく結婚目前まで漕ぎつけた久邇宮朝融王は、彼女にまつわる“ある噂”を耳にし、強引に婚約を破談にした。その後、別の宮家の子女と結婚したものの……(「綸言汗の如し」)
徳川家の若き未亡人・実枝子は、喧嘩の絶えなかった夫・慶久が妾との間に遺した子に愛情を注げず苦悶していた。思い起こせば、あの頃は本当に幸せだったのに。(「徳川慶喜家の嫁」)
まもなく結婚の沙汰が下るのではないかというある日、久邇宮家の息子たちは声を潜めて話していた。「内親王はご免こうむりたい」――(「兄弟の花嫁たち」)
九条家の子女・節子は15歳の時に嫁いだ。のちの大正天皇の后(貞明皇后)である。夫は妻を顧みないにもかかわらず子ばかりが生まれ、節子は悲しみに歯を食いしばる。(「皇后は闘うことにした」)
貞明皇后の秘蔵っ子・秩父宮に嫁いだ勢津子もまた、皇后によって選び抜かれた秘蔵の嫁だった。だが、2人の間に子はできず、秩父宮も病を得てしまう。(「母より」)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
178
林 真理子は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、『李王家の縁談』のスピンオフ、皇族・家族の結婚を巡る連作短編集、オススメは「綸言汗の如し」&表題作「皇后は闘うことにした」です。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639192322024/12/26
あすなろ
115
知らぬベールの幕内の歴史と出来事。そんな短編集であった。発刊前から注目していた一冊。明治帝以降の皇后や皇室・宮家の累系と后達のお話である。明治〜昭和へと流れていく中、これらが近代史と共にどう感情と共に動いていたのか。我々が知っている様で知らぬ事を知れる稀有な作品集だと思ったのである。ただ、歴史の流れを押さえているだけかの様な描き込みが勿体ないなとも思った。あとがきでもご自身にて書かれている通り、林氏の学長としてのお仕事の忙しさ故であろう。また、時間を見てこれらから長編が生まれる事はないのだろうか。2025/04/18
大阪のきんちゃん2
38
面白かったデス。 大変読み易く、また自分でも興味のあった皇族・旧皇族らの女性たちの物語だったのであっという間に読めてしまいました。 朝融・実枝子・鳩彦&稔彦・節子・雍仁&勢津子(何れも敬称尊称略)をそれぞれフィーチャーした5つの短編集で、コンパクトに纏められているせいか重厚感がなく惜しい気がします。もうちょっと長編にしてじっくり読ませて欲しかった… あとがきにも触れられていましたが、日大の理事長なんてそんなことやってる場合とちゃうで!作家に専念してよ~と改めて思うのでした、ハイ。2025/07/29
はれひめ
35
お上やおひいさま好きとしては肩透かしの感あり。Wikiを少々膨らませた程度のお話だった。林さんが書けなくなったのは多忙のせいだけなのか?編集さんに言われて春休みとGWでササっと本にしたと仰るのは、リップサービスだとしても哀しい。 2025/03/26
shikashika555
34
明治末から昭和にかけての華族の結婚にまつわる話5話。 すぐそこで人物が動き話しているかのような臨場感。 まるで昭和の昼ドラのような林真理子スタイルで話は進む。 ほぼ史実を下敷きにしたものであり、おそらく会話も資料にあたられたものだろうと感じる。 その上での林真理子的な見せ所はなんと言っても 「生きるために稼がずともよい人間の、人と世の中を舐め切った結婚観」に尽きる。 バブル頃に書かれた(タイトル忘れた)専業主婦の不倫ものの男女入れ替え版のような、結婚への後悔とその心情描写よ。 うわぁ意地悪だな、と思う🙄2025/02/20