内容説明
木山捷平は詩人として活動をはじめ、太宰治や井伏鱒二と交流を持ちながら小説家としての才能を開花させる。飄逸でユーモアに溢れる世界は唯一無二。決してよく知られた作家ではないが、現在まで静かに愛され続けてきた。木山作品をこよなく愛する岡崎武志が、木山自身を投影した“正介”が登場し東京の街を闊歩する作品を中心に編んだオリジナル作品集。「軽石」「苦いお茶」「下駄の腰掛」ほか収録。
目次
耳かき抄/竹の花筒/貸間さがし/お守り札/下駄にふる雨/下駄の腰掛/冬晴/苦いお茶/川風/太宰治/月桂樹/釘/軽石/赤い靴下/大安の日/編者解説 岡崎武志
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
二戸・カルピンチョ
22
木山捷平の短編集である。尻切れトンボのような落ちの、日常の中の人生を見せてくれる木山捷平である。「耳かき抄」のみ既読であったから、深みのある作品の数々を楽しんだ。ドラマチックではないドラマ、人々の暮らし、夫婦のやりとり、可笑しみ悲哀。編者解説の「手垢のついた清涼感」とはうまいこと言う。どれもそれぞれ良いけれど、今回は「冬晴」を推しておく。2026/05/03
みつ
19
これは、いわゆる私小説なのか。ただし、「私小説」と聞いて思い浮かべるような露悪的なもの、息苦しさはなく、脱力感と飄々としたユーモアがえも言われぬ味わいを醸し出す。老境を迎えた夫婦仲も良く、枯れたエロティシズムの表現もそこかしこに見出せる。編者のベスト3でもある、3円で買えるものを探し求める「軽石」、銭湯が開くまでの時間来し方の回想に耽る「下駄の腰掛」、終戦直後で背負った幼女との十数年の再会を描く「苦いお茶」は、いずれも名品。この、何も起こらないのに面白い魅力は、編者も挙げている1歳上の小津の映画に通じる。2026/02/15
阿部義彦
18
好物ちくま文庫2ヵ月前の新刊です。文庫オリジナルのアンソロジーを選んでくれた、岡崎武志さんに感謝します。何ともとぼけた味のある小説を書く人なんでしょう。ほぼ自分の身の回りの事と過去の自分の体験らしき追憶を材料に、あちこち寄り道しながら語られる日常。つげ義春さんの「李さん一家」を思い出しました。太宰治と同時代人で、同じ同人誌で書いてた事も有ります。好きな話は「苦いお茶」が圧倒的でした。引揚者同士の時と場所を超えた結び付き。あと「釘」この話を元に漫画家の倉多江美さんが昔「一万十秒物語」で漫画化してましたね。2024/12/05
海恵 ふきる
9
しれっとボケ続けているみたいな文体だが、作家は戦後満州から引き上げてきた苦難の歴史を持つ。程よい距離感で厳しい現実に向き合うには、ユーモアは一種の武器だったに違いない。作家のエピソードを部分的に踏襲しているという意味では私小説の域を出ないが、こういう軽いタッチの作家は当時珍しかったろう。戦中を切り抜けてきた奥様の動じぬキャラクターも良い。人生の酸いも甘いもすい分けた後に読むと、この軽妙さがたまらなく感じるのだろうなという予感がある。誰もが知る作家ではないが、長く付き合ってゆきたいという気持ちにさせられる。2026/01/17
Cちゃん
6
1904年生まれの作者、聞いた事もない人でした。おそらく戦中、戦後あたりの日本人の日常をユーモアを混じえて自分語りや、自身の分身的な正介という主人公を使って展開する短編集。今では使われなくなったような言い回しや言葉、そして当時の文化や習慣が興味深かった。ほぼ毎日お酒を飲み歩き家でも昼夜問わず飲み、飲んでいればご機嫌。ちょっとした事でご機嫌斜め。男尊女卑などなど全て当たり前。いや、おおらかで良いじゃないか。今の世の中ハラスメントにレイシズムにLGBTQに…。生きづらくなりました。2025/05/17
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