内容説明
電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。
世界の終末に神が人類を裁く「最後の審判」。
キリストが再臨して、天国で永遠の命をあずかる者と地獄へ堕ちて永遠の苦しみを課される者を振り分けるとされる。
西洋の人々にとって、希望の光であると同時に恐怖の源でもあった。
本書は、このキリスト教の重要主題をわかりやすく解説する。
死後の世界はどうイメージされたか。
罪は誰が裁き、どんな罰が与えられたか。
裁きに正義はあったか――。
多くの図版とともに読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
125
「マグダラのマリア」から始まる岡田先生による中公新書のキリスト教シリーズの6冊目。キリスト教徒ではない西洋美術史学者による醒めた視点は、いつも極めてユニーク。「ニコデモ福音書」などの外典や偽書も躊躇なく引用する。特に「最後の審判」については納得できない感覚が多いのだろう。「なぜ、煉獄が必要か」「最後の審判以前に既に裁きがなされているでは…」「赦しのイエスなのに、なぜ裁くのか」「肉体も復活するのか」などが、数多くの美術作品を参照して考察されている。反教権主義のダンテの思いが、通奏低音として流れている。2022/09/10
パトラッシュ
113
ミケランジェロの大壁画で有名な「最後の審判」だが、聖書を字句通り解釈するキリスト教原理主義派には審判が実際に起こると信じる者がおり、その終末思想から人民寺院などの尖鋭的カルト系セクトが生まれた。カトリックが中世欧州を席巻する過程で強権支配の道具とされ、異端審問や反対派弾圧の口実に使われた歴史を明らかだ。信仰の正義を疑わない宗教にとって、地獄か天国かを決める権限を握るのは信徒を服従させる格好の手段だ。文化史家の著者は理論や思想的側面に絞って論証するが、都合のいいように解釈され続けた歴史こそ重要ではないのか。2022/09/10
HANA
69
キリスト教の終末思想、最後の審判を「あの世の地製図」「裁きと正義」「罪と罰」「復活」という四つのキーワードで読み解いた一冊。ただ使用されているテキストが主にダンテの『神曲』と教会美術なため最後の審判とは何ぞや。という本質的な物ではなく、主にその周辺について説いているような形となっている。その為キリスト教についての知識や雑学は深まるものの、どうも隔靴掻痒の感があるな。キリスト教についての知識の少ない身としては些事を語られるより、ダイレクトに最後の審判というものを解説して欲しかった。題材は魅力的なのに残念。2022/08/08
ネギっ子gen
54
『マグダラのマリア』で著者名を知ったが、この中公新書のキリスト教シリーズ本、本書が6冊目になるのですね。巻頭にカラー口絵4枚など、多くの図版と豊富な参考文献。<これら6冊すべてがいうまでもなくキリスト教と強く結びついたテーマであるのは、筆者が長らく西洋美術に関心をもってきたからである。が、もちろん美術あるいは芸術だけに限られるわけではない。西洋の文化や思想を深く理解しようとするなら、キリスト教についての知識を欠くことはできない。これはずっと変わらない筆者の信念である>。同感。これは西洋文学もそうですね。⇒2022/08/20
みこ
28
最後の晩餐を通じてキリスト教の死生観や罪などについて解説。ただ単にこういうものと語るのではなく、どのような経緯を経て地獄や復活に関する価値観が形成されていったかも語ってくれるし、絵画を通じて解説してくれるのでキリスト教に関する素養がない私でもどうにか理解できた。2022/08/30