内容説明
怪談師を生業としている三咲は、訳あって“本当に人が死ぬ”怪談を探している。相棒は「呪いか祟りで死にたい」というカナちゃんだ。新たな怪談が見つかると、死ねるかどうか確かめてくれる。
ある日、カナちゃんが「釣ると死ぬ魚」の噂を聞きつける。静岡県のある川の河口付近で見たこともない魚を釣った人が、数日のうちに死んでしまったというのだ。類似する怪談を知らなかった三咲は、噂の発生源を辿って取材を始める。すると、その川沿いには不思議なほどに怪談の舞台が集まっていることが分かってきた。これは偶然か、それとも狗竜川には怪異の原因が隠されているのだろうか。
自分が生涯追い求めてきた“本物”の怪談の気配を感じ、三咲は調査にのめりこんでいく。しかし、うまくいくということは、カナちゃんが死んでしまうということだ。自分はそれを望んでいるのだろうか――?
解説:小野不由美
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
annzuhime
38
人が本当に死ぬ怪談を探す女性と、呪いで死にたい女性。どこか危うくて脆い2人が死を招く怪談を探し求める。川に沿って移動する怪談。ホラー要素に加えてちゃんとミステリになってる。でもやっぱりホラー。こういうの好きです。登場人物に感情移入する感じではないけど、心のどこかを掴まれるような感じの本。そう思わせる本ってすごくいいよね。圧巻でした。横溝正史ミステリ&ホラー大賞。2025/01/02
なつくさ
34
初読みの作家さん。横溝正史ミステリ&ホラー大賞作品。人が本当に死ぬ怪談を探す三咲と呪いか祟りで死にたいカナちゃん。釣り上げたら死ぬ魚の話を追う二人だったが……。ホラーは苦手なのだけれど、帯に書かれた選評が気になり読んでみました。ホラーよりもミステリ色が強い作品でした。無理やり感が気になってしまいましたが、怪談や話を一つの生物かのように扱うところが新鮮に感じました。伝説等は話に尾ひれがついてとして成るもので、虚魚とは言い得て妙なタイトルだと感じました。2024/12/28
空のかなた
23
第41回横溝正史ミステリー&ホラー大賞受賞作。”本当に人が死ぬ怪談があるなら、それを使ってあいつを殺したい”という帯のキャッチに惹かれた。小野不由美氏のあとがきを読むと、尚一層この作品が大賞を取った理由が見える。主人公は怪談師の三咲と、祟りで死にたいカナの二人。どちらも自分だけが生き残ったことに罪悪感を抱いている。「釣ると死ぬ魚」という怪談の真相が主テーマ。始めは作り話の災いや禍であっても、広まるうちに形が形成され、何か良くないものを纏っていく怖さにゾッとした。怪異、という表現がぴったり。2025/04/10
イシカミハサミ
22
主人公は怪談の語り部。 収集した怪談に共通点を発見し、 移動しているのではないかと疑う。 その源流を探し求めて……。 ホラーであってミステリー。 ミステリーの手法は使われているけれど、 あくまでホラーの文脈の範囲内での表現でされていて、 その著者のバランス感覚が絶妙。 これから追いかけていきたい作家さん。2025/01/16
一華
21
両親の復讐のため、ひとを殺せる怪談を探す怪談師の三咲と呪いか祟りで死にたいカナちゃんが、「釣ると死ぬ魚」の怪異の真相を探る。ホラーというよりも怪談。読後、いろんな怪異話のなかには真実?そして、もっともっと怖しいことが隠されているのかも〜と、思い少しゾクッ2025/02/18