内容説明
1984年春。アイルランドの小さな村で、15歳の少女シェルは孤独な毎日を送っていた。母親を病気で亡くして以来、酒浸りの父と、反抗的な弟、幼い妹の世話に明け暮れていたのだ。気がまぎれるのは、幼なじみの少年デクランや親友のブライディと、くだらない話をしたりこっそり煙草を吸ったりしているときくらい。ところが、デクランにキスをされたことがきっかけで、深い関係になってしまう。やがて妊娠し、周囲に隠しているうちに、思いがけない事態に……。「助けて」と声をあげることができなかった少女の苦難や成長を、美しく切ない筆致で描く。カーネギー賞、ガーディアン賞、ドイツ児童文学賞など数々の賞にノミネートされ、ブランフォード・ボウズ賞とアイリーシュ・ディロン賞に輝いた、シヴォーン・ダウドの伝説的デビュー作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そらこ
6
アイルランドのカソリックの閉鎖的な村が舞台。シェルはもうすぐ16歳。母親を1年少し前に亡くし、その後信仰を深めた父親はアルコールに溺れる。シェルは弟妹と極貧の暮らしを強いられる。その中、新しくきた神父に清らかさを感じる一方で、女友達のボーイフレンドに惹かれ関係をもつ。そしてとんでもない事件に巻き込まれる。彼女の暮らしを描く前半は静かで暗い。中盤は壮絶。事件が起き解決する後半は先が知りたくて一気に読んだ。ハッピーエンド。だが辛い終わりでもある。母親の親友だったという人が、近くにいて温かい人でよかった。2025/04/17
Incisor
4
1984年、アイルランド。15歳のシェルの母は亡く、貧しく酒浸りの父、弟妹の世話を担う。幼なじみと付き合い始めると親友は去っていった。やがて予期せぬ妊娠に気づき、孤独は深まる。閉塞感しかない小さな村で、父をはじめ周囲の大人たちの見て見ぬふりをするまなざしは因習にとらわれ、シェルにとって宗教もよりどころとならず、息苦しくなりながらもページをめくる手がとめられなかった。救いが感じられないなかにも、シェルの口ずさむ詩の豊かな感性、弟妹との絆、人間味あふれるともいえる父親や周囲の人たちの生き様に目が離せなかった。2025/03/13
いっこ
4
舞台は『ほんのささやかなこと』と同じ、1980年代半ばのアイルランド。ヤングケアラーというべきくらしを送っていた15歳の少女シェルが、幼馴染のデクランの要求に従ううち、妊娠する。初めはただ生理が遅れているだけと思いたいシェルだったが、図書館の人体の本を盗んだり、幼い弟妹と出産の準備をしたり、自分でなんとかしようともがく。気ずかないふりをする大人達、信者に寄り添いたいのに迷いの多い神父、かの「マグダレン」に限らず、この社会自体がひどい有様なのだ。そして現代社会も、このような少女に優しいわけではない。2025/02/24
Olga
3
40年くらい前、「世界の車窓から アイルランド編」を録画して、繰り返し見ていたが、物語の舞台はちょうどそのころ。あのとき見ていた風景のどこか、あるいは映らなかった場所にシェルのような子がいたのだ……。2025/02/01
にしきみ
1
痛々しく美しい2025/03/07
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