すばやい澄んだ叫び

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すばやい澄んだ叫び

  • ISBN:9784488011437

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内容説明

1984年春。アイルランドの小さな村で、15歳の少女シェルは孤独な毎日を送っていた。母親を病気で亡くして以来、酒浸りの父と、反抗的な弟、幼い妹の世話に明け暮れていたのだ。気がまぎれるのは、幼なじみの少年デクランや親友のブライディと、くだらない話をしたりこっそり煙草を吸ったりしているときくらい。ところが、デクランにキスをされたことがきっかけで、深い関係になってしまう。やがて妊娠し、周囲に隠しているうちに、思いがけない事態に……。「助けて」と声をあげることができなかった少女の苦難や成長を、美しく切ない筆致で描く。カーネギー賞、ガーディアン賞、ドイツ児童文学賞など数々の賞にノミネートされ、ブランフォード・ボウズ賞とアイリーシュ・ディロン賞に輝いた、シヴォーン・ダウドの伝説的デビュー作!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

星落秋風五丈原

31
家族だけでは限界があり社会のセーフティネットが介入すべきなのに、積極的に一家を助けようとするローズ神父は、遠ざけられる。ダウドは母親の死とそれが子供たちの成長をいかに阻害したかに着目して描いている。同性の年長者が家庭内にいないため、シェルはブラジャーの着用、セックス、避妊など、同年代の人々が当然のように知っているべき事について、彼女は驚くほど無知である。そして無知である結果を、自分ひとりで背負う事になる。表紙絵で、海辺を歩く彼女は、どうしようもなく孤独だ。果たしてそれで良いのだろうか?と著者は問うている。2025/07/29

キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん

22
アイルランド、17歳の少女、母親を亡くし、酒浸りの父親と幼い弟妹の面倒をみているという、アイルランド的過酷な女性の立場を描いた作品。酒浸りの父親は妻を亡くした悲しみに浸る、というだけで人々は同情して、その子どもの少女がいかに大変な思いで家事をしているか、お金も渡さずに子どもたちを怒鳴って支配しているか、子どもたちがボロボロの服を着ているかに、全く目を向けない、「信心深い」村人たち。教会は何時間も退屈な教えを垂れるが、手を差し伸べようともしない。 少女は妊娠。その顛末は辛い。2025/08/23

HISA

12
☆☆☆☆2006年に刊行された著者の初長編作。カーネギー賞、ガーディアン賞などにノミネートされた。日本では2024年刊行。大変なものを沢山背負ったシェルが可哀相で、何とかしてあげたくてずっと切なかった。悲しい気持ちになるんたけど、読まずにいられないストーリーの巧みさやアイルランドの村の空気が目に浮かぶ美しい描写。明るい未来を感じさせるラストも良かった!シヴォーン・ダウドは本当に素晴らしい作家!!早逝されたのが悔やまれる。2025/08/31

ハルト

11
読了:◎ 1980年代のアイルランドが舞台。わずか15歳で赤ん坊を身籠ってしまった主人公は、誰にもその秘密を打ち明けられないまま、子供を出産してしまう。▼性教育の遅れによる無知さゆえ、友人なはずの少年と身体を重ねてしまい、赤ん坊ができる。父親は母親が亡くなってから酒浸りで子供たちの面倒はまるで見ない。いわゆるヤングケアラーな主人公はつらい環境に身を置いているのが、見ていて痛ましい。妊娠出産までの間、彼女の叫びを聞き取れる大人はいなかったのか。否応なく立ち直り成長させられた主人公の未来はどうなるのだろうか2025/07/10

そらこ

11
アイルランドのカソリックの閉鎖的な村が舞台。シェルはもうすぐ16歳。母親を1年少し前に亡くし、その後信仰を深めた父親はアルコールに溺れる。シェルは弟妹と極貧の暮らしを強いられる。その中、新しくきた神父に清らかさを感じる一方で、女友達のボーイフレンドに惹かれ関係をもつ。そしてとんでもない事件に巻き込まれる。彼女の暮らしを描く前半は静かで暗い。中盤は壮絶。事件が起き解決する後半は先が知りたくて一気に読んだ。ハッピーエンド。だが辛い終わりでもある。母親の親友だったという人が、近くにいて温かい人でよかった。2025/04/17

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