内容説明
断崖絶壁に建つ武家屋敷から一族が忽然と姿を消した「消失屋敷」の殺人事件で出会ったフリーライターの新城誠と文芸評論社の編集者・中島好美。その二人にまた不可解な人間消失事件が起こった。念入りな取材を重ねることで知られるノンフィクション作家が失踪したと、捜索を依頼してきたのは、その作家の妻だった。新城は聞き取りをさっそく初めていくのだが、失踪直後に作家の実家の放火事件が発生、まじめに見えていた作家の裏の顔が暴かれることに――。富豪だった父の謎の自殺、知らない人物への送金、そして顕れる疑惑の数々。新城は持ち前の推理力を活かし推理を続けた。そして事件は意外な方向へ。巧妙に張り巡らせたミステリの伏線と物語のダイナミズム。本格ミステリの女帝が放つ、驚愕の推理エンタテインメント。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
88
久々に読む深木氏の本格ミステリ作品。「消失屋敷」に出ていた人物が再登場とのことで、そちらの詳細は忘れてしまったが何か唖然となった記憶はある。で読んでみたが、前作を覚えていなくても問題なし。単品として楽しめた。探偵役のルポライターが芯のブレない人物で、明らかになる新事実に惑わされることなく、きっちりと構図を組み上げていくのに好感が持てた。余分な飾りを排除して次々と証言が為されていく流れも良い。そしていつの間にか既定路線の推理の中に囚われていた自分に気付かされる。視点切り替えも巧みに活用。次作も期待したい。2024/12/02
koma-inu
32
ある作家が取材後、行方不明になり、その行方を調査する新城&中島コンビシリーズ。前作を読んで無いですが、同じく人間消失もの。社会派サスペンス寄りの話で進み、やや地味。終盤の解決編は、なかなかの怒涛展開。今までの人間関係の印象がガラッと変わる上に、消失した理由がモノ悲しい。冷静に考えるとこの設定は無理じゃないか?という気もしますが、良しとしましょう。所々出てくる居酒屋メニューが美味しそう。ところで、消失の依頼を、なぜしたんだっけ?という疑問が残りました。2025/01/12
KEI
30
初読みの作家さん。フリーライター新城が謎を解くシリーズ2作目らしい。行方不明になった資産家のノンフィクションライターを探す話。1950から70年頃まで起きた新生児取り違え事件、連続放火、DVなど盛りだくさんだったが、新城の出した真相は驚きよりだいぶ無理があると思う。加えて、真犯人が分かってもその後はご自由にと犯人に任せてしまう事は殺人者を見逃す時いう事。昔読んだ内田康夫の浅見シリーズの結末が似ているので不満が残ってしまった。2025/01/05
おうつき
16
前作『消人屋敷の殺人』があまり楽しめなかったので期待値低めで読み始めた続編。蓋を開けてみれば前作は何だったんだと思うほど面白かった!序盤こそ地味でやや退屈な内容だったが、思わぬ方向に話が転がり始めてからは惹き込まれる。解決編では、微妙に違和感のあった描写に別の意味合いがあったことが判明していき、複数の伏線が一本の線に収束していく。リアリティのある描写に大胆な奇想が結びついていて、本格ミステリとして大満足の物語だった。新たな手がかりが出てくるたびに丁寧に推理を積み重ねていく過程が描かれているのも好み。2024/12/01
KDS
7
「消人屋敷の殺人」のコンビ、新城誠と中島好美が失踪したノンフィクション作家・稲見駿一の行方を追う。依頼をしてきたのは稲見の妻の日菜子。どうやら稲見は何者かから脅迫されていたらしいこと意外には殆ど手掛かりのない状況。これどうなるの?ってな感じで物語は始まるが、妻の日菜子は何か重大なことを隠していた…?関わりのある人物らの事情聴取のみで進んでいくだけだが先の展開がまるで読めないので、ワクワクしながらページを捲る。日菜子の隠している秘密とは?稲見を脅迫していた者の正体とは?予想外の結末と伏線の回収が見事な一冊。2025/01/06