内容説明
第34回紫式部文学賞受賞
皆川博子 新たな代表作、誕生。
自らの道を求め交易商人を志した二人の少女の物語。
少年の日に夢見た「本物の文学」という幻に、今日、出逢ってしまいました。
パンドラの匣に残された最後の希望のような言葉の冒険。 ――穂村弘
記録に決して残らない「が、あったはず!」の歴史的瞬間。
虐げられし者たちが織り成す、魂の生存を賭けた「智」の連鎖。
時を超えて掘り出されるその昏き光彩、まさに圧巻! ――マライ・メントライン
1160年5月、バルト海交易の要衝ゴットランド島。
流れ着いた難破船の積荷をめぐり、生存者であるドイツ商人と島民の間で決闘裁判が行われることとなった。重傷を負った商人の代闘に立ったのは、15歳の少女ヘルガ。
義妹アグネが見守る中、裁判の幕が開き、運命が動き出す――
ドイツ商人が北へ進出し、ロシア・ノヴゴロドでは政争が頻発するなど動乱の時代を生きた人々を詩歌や戯曲形式も交えて紡ぐ、小説の新たな可能性を拓く傑作長篇!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
185
皆川 博子は、新作中心に読んでいる作家です。著者の新境地でしょうか、小説に詩歌や戯曲を盛り込んだ作品、文学としての格調は高いと思いますが、物語としては・・・ https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309031088/2023/06/14
榊原 香織
75
中世、北ヨーロッパで少女2人が商人として成長する、という非常にニッチな物語。 作者の博識にはいつもながら感心する。 特に、決闘裁判(しかも男対女)のシーン。最近新書で読み、それを小説にしたのがある、と知って、本書を手に取ったのだった2024/05/25
キムチ
70
久しぶり皆川世界へ。時は日本じゃ鎌倉期前夜。舞台はバルト海∼ノブゴロド、島を舞台とした海上商人の群像図。帯に書かれている「交易商人の道を志す2人の少女の浪漫」は中途で尻すぼみ、題が示す様な風配図を呈している。1人称と3人称が時に入れ替わるし、名前が頭に入らず人物とエリア図を紙に書いてメモ取りつつ読んだ。森鴎外や西城八十訳の詩歌を挟み雰囲気を盛り上げているが戯曲のパーツは殆ど味わえなかった。後半、ユーリィの成長譚になると思いきや‥ヒルデグントは夫を差し置いて・・でもなく。個人的にはマトヴェイの語りが解り易。2025/03/28
雪紫
65
12世紀、男尊女卑な政略結婚生活から交易商人の道を選んだヘルガとその夫の妹、アグネの進んだ航路。あらすじからふたりのシスターフッド的な雰囲気を感じたものの(勿論引き立ってるものの)描かれるのは当時の流通、そして理不尽な環境で春を謳歌するものが、抵抗したものに対する怒り(ざまあ展開を迎えた悪役が逆恨みしてるようなもの)と貫く意志。時折戯曲形式が流れることにより小説を読むというより観客席で終始スポットライトの付いた舞台を見てるような感覚を味わう。そして、静かにもう、終わりと思うほどに最後まで引き込まれていく。2023/09/06
天の川
61
ハンザ同盟成立過程の12世紀、北海・バルト海交易の中継地点にあたるゴッドランド島。結婚という絶望的な枷から逃れようと裁判の判決を決めるための決闘に代理で挑むヘルガと彼女を慕う義理の妹アグネは自由を求めて商人を志す。小説と戯曲が交互、途中にランボオやロセッティの訳詩も挿入され、不思議な読み心地。2人の少女に焦点を当てて、彼女たちの成長や挫折を読みたかったが、商人たちの駆け引きや都市の権力闘争の記述が多く、やや散漫な印象。とは言え、中世ヨーロッパ社会の史実を調べ上げて上梓なさった92歳の皆川さんの凄さったら!2024/12/04
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