朝日新書<br> 限界の国立大学 法人化20年、何が最高学府を劣化させるのか?

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朝日新書
限界の国立大学 法人化20年、何が最高学府を劣化させるのか?

  • ISBN:9784022952912

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内容説明

修士以上でも「年収300万円~」
「研究時間が1秒もない」、教職員の83%が意欲低下傾向……。
現場のリアルな声でわかった衝撃的な実態とは――。

東大の授業料引き上げ、
「もう限界です」と訴える国立大学協会の異例の緊急声明。
今、国立大学で何が起きているのか?

法人化20年という節目に、
学長・教職員500人弱へ行ったアンケートに綴られていたのは、
「悲鳴」にも近い声だった。
日本の国際的な研究力低下が叫ばれる背景には、どのような要因があったのか?

長年にわたる取材で浮き彫りになった、
法人化とその後の政策がもたらしたあまりに大きな功罪とは――。

(目次)
第1章 国立はなぜ“残酷立”と揶揄されるのか 
トイレが改修できない!/節電の波、図書館にも/運営費交付金をめぐる攻防/命名権を売却する大学が続出/なぜ東大が授業料値上げ?/苦境に立つ学生の願いは/他の国立大への影響はあるか/私大に溜まる「国私間格差」の不満

第2章 研究をする時間がない研究者たち 
書類作成に追われる研究者たち/「トップ10%論文」はG7で最下位に/研究時間を圧迫する複数の要因/研究費獲得はクラウドファンディングで/私大に移る国立大研究者も/社会の理解をどう得るか

第3章 不安定化する雇用 
修士以上でも「年収300万円~」衝撃の求人条件/問題化する非常勤の雇い止め/研究者の海外流出も/博士課程をあきらめる若者たち/女性研究者へのしかかる困難/コラム  法人化とは何だったのか? 元文科官僚の独白/「世界の常識とかけ離れた」日本の大学/教育、研究、社会貢献のバランスが改善/民間的発想、教職員に違和感/なぜ運営費交付金は減額されたのか

第4章 低下する教職員のモチベーション 
教職員の83%が意欲低下傾向/批判根強い「傾斜配分枠」/論文数か、大金を引っ張ってこられるか/広がる専門分野間の格差/研究・教育の多様性が失われつつある/ひずみ大きい教育単科大学/「選択と集中」から「知の総和」へ/外部資金の獲得に大きな差/「究極の選択と集中」政策がスタート/能力の高い教員を増やすには

第5章 誰が「大学の自治」を奪うのか 
なぜ憲法で「学問の自由」が規定されたのか/学術会議問題を想起させた法改正/研究費求め国の重点分野へシフトも/「文科省や中教審は、官邸の下請けになった」/学生を「人質」に大学改革強要/学長権限強化で「自治奪われた」/学外者による運営関与の功罪/「大学の自治」が尊重されるために

第6章 持続可能な国立大学とは 
「法人化を推進したのに裏切られた」/多くの学長が20年で「悪い方向に進んだ」/20年間で「最も悪かった」政策/「法人化は、まだ道半ば」/厳しい財政事情のなか直面する課題/社会に研究内容を伝える試みを/「限界です」の先に希望はあるか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

gonta19

96
2024/12/7 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。 2024/12/11〜12/13 2004年に国立大学が国立大学法人化され、20年が経った。その間日本経済は停滞し続け、日本の研究力の低下がますますひどくなってきている。その裏側を、朝日新聞の取材班が探る内容。文部省はある程度守ろうとしているが、財務省が予算をどんどん削ってしまい、絶望的な状況に。「選択と集中」がもたらす弊害が本当に大きいように思う。一体、財務省は日本の将来をどう考えているのだろうか。2024/12/13

kan

34
読むのがつらい報告だった。運営交付金削減により、国立大の運営や研究に多大な影響が出ているのは以前からだが、ついに東大も授業料を増額し、受験生や家庭にも直接影響し始めた。異なる特質の国立大を共通指標で評価する傾斜配分枠が追い討ちをかける。一定の競争は必要だが、過度な選択と集中で大学間格差が広がり、国立大の閉鎖や統合が増え、研究力の縮小と地方の機能不全に繋がりそうで心配だ。ビジネスの論理で学問や研究を評価することには反対。勤務校も予算が削られ老朽化も激しいし人も足りない。研究や教育にお金をかけない国って…。2025/02/15

おさむ

31
国立大学が法人化されて20年を機に行ったアンケート分析が主体。選択と集中で教職員の身分が不安定化して研究も偏向。雑務に追われ、世界で引用される論文のランクも下がった、という。興味深いのは霞ヶ関で法人化を推進した杉野剛氏の「法人化は大学側が求めた」とする解説。実際、教育、研究、社会貢献のバランスが法人化で改善した、という。なるほど、そうした視座なら見え方が変わる。かつては企業が担った人材教育や育成を大学側に求めるようになったという点にも納得。「大学の自治」が死語になっているとの指摘は、言い得て妙だと思う。2025/01/19

スプリント

13
国力が落ちるのもさもありなん。 教育費用の無償化をした場合に国立大学は研究力を保つことができるのだろうか。2025/03/21

awe

13
国立大学法人化は失敗だったという声が大きい。運営費交付金の減額、(財務省による世紀の愚策と名高い)同交付金の傾斜配分枠の導入、競争的資金の比重の高まりにつれて増える教員の事務負担(申請書の準備等)など。国立大はとにかく金がないので財源を多様化させるほかない。クラファンやったり寄付募ったり企業との共同研究を進めたり。しかしそれでも足りない。そうして学費値上げに踏み切ったと(比較的財源に余裕がありそうに見える東大が、である)。◆大学間の格差も大きい。東大京大等の所謂「指定国立」は外部資金を比較的獲得しやすい2024/11/30

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