内容説明
完璧主義とは、ひとつの経済システムが生みだした、人間ががむしゃらに限界を超えようとする心理である。本書では、この考えを基に、完璧主義とはどういうものか、それが人間にどのような影響を及ぼすのか、それがいかに急激に増えているか、なぜ増えているのか、そこから逃れるにはどうすればいいのか、解説する。/うつ病、不安障害、強い絶望感――精神的苦痛の奥には完璧主義が潜んでいる。専門家による研究の最前線と集大成。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
122
自らの可能性を極限まで追求し、より完璧であれと目指すのは悪ではない。文学でも教養小説や成長物語はそんな道を選ぶ若者が主人公だが、彼らは苦しみに耐えられる強い意志の持ち主と描かれてきた。しかし大部分の人間は成功しなければとの苛烈なプレッシャーに晒され続けると、心が壊れてしまうほど弱い。SNSで瞬時に情報が伝わる今日は成功への期待値が自他ともに高まり、成功への執着と失敗の恐怖が昔より強まった。自由主義が生んだ精神の不自由さは、中島みゆきが「逃げ道のない闘いの日々が、いつか人類を疲れさせていく」と歌った通りだ。2025/01/30
よっち
30
精神的苦痛の奥には完璧主義が潜んでいる。完璧主義とはどういうものか、それが人間にどのような影響を及ぼすのかを解説した1冊。ソーシャルメディアの影響や子どもを育てるプレッシャー、現代の不安定な雇用といった現代社会の要因を背景に、遺伝と育ち方が複雑に絡み合って完璧主義が形成されている点を指摘していて、うつ病や不安障害、強い絶望感といった強い影響を及ぼしていること、それがなぜ急激に増えているのかを考察しつつ、自身の経験も踏まえながらそこから逃れるにはどうすればいいのかを考えていく内容はなかなか興味深かったです。2025/01/09
まゆまゆ
14
自己、他者、社会によって完璧主義を強要される実態を描く内容。社会が完璧を求めると、その影響によって自分には何かが欠けていると思い、他者から軽視されると思い込む。完璧でないと感じるときに生まれる恥というトゲによって、自己改善の要求は限りなく続く。自分は自分のままで良い、と思うことでラクに生きることを勧めるが、完璧主義に囚われたままではやがて心身に支障をきたすだろう、と。やはり足るを知る、が一番(笑)2025/04/15
於千代
4
先行研究をもとに完璧主義を自己志向型(自分が完璧でないといけない)、他者志向型(他人が完璧でないといけない)、社会規定型(他者が自分に完璧を求めていると捉える)の3つに分類し、完璧主義者の増加、特に社会規定型の急増を問題視する。 社会規定型完璧主義は、うつや自殺念慮などと深く関連して心理的ダメージを引き起こす要因とされており、その影響が深刻であると分析している。 その背景には、社会が求める過大な要求やネットによって他人と無限に比べてしまうことがあるとされる。2025/05/06
劇団SF喫茶 週末営業
4
現代は完璧主義を目指すべき理想として信仰し、皆が無自覚に駆り立てられている。ジョブズやイーロンのような成功者は極限まで自分をコントロールして働き、欲しいものを全てを手に入れた、というのが現代の神話として語られる。だがこれは生存者バイアスで、競争を勝ち抜いたからといって成功するわけではない。現代では階級移動が難しくなっており成功者はより成功するシステムになっている。だがそうとも知らず我々は幼少期から競争を強いられ、自分を売り込むために自分を偽る。「社会に有用な人材」として完璧な人間を演じる。2025/04/16
-
- 電子書籍
- 不倫夫の託児計画【タテヨミ】第1話 H…
-
- 電子書籍
- 政婚~セカンドストーリー~ 七夜 第1…
-
- 電子書籍
- ヨルフォト8 ~写真家 茶谷明宏がゆく…
-
- 電子書籍
- すいばれ(『霞町物語』講談社文庫所収)