内容説明
「私たちは必死に生きた。しかし、どう死ねばよいのか、それが分からなかった」
なぜ、透析患者は「安らかな死」を迎えることができないのか?
どうして、がん患者以外は「緩和ケア」を受けることさえできないのか?
10年以上におよぶ血液透析、腎移植、再透析の末、透析を止める決断をした夫。
その壮絶な最期を看取った著者が、自らの体験と、徹底した取材で記す、慟哭の医療ノンフィクション!
解説 日本腎臓学会理事長・南学正臣(東京大学腎臓内分泌内科教授)
<序章>より
「夫の全身状態が悪化し、命綱であった透析を維持することができなくなり始めたとき、
どう対処すればいいのか途方に暮れた。
医師に問うても、答えは返ってこない。
私たちには、どんな苦痛を伴おうとも、たとえ本人の意識がなくなろうとも、
とことん透析を回し続ける道しか示されなかった。
そして60歳と3ヵ月、人生最後の数日に人生最大の苦しみを味わうことになった。
それは、本当に避けられぬ苦痛だったか、今も少なからぬ疑問を抱いている。
なぜ、膨大に存在するはずの透析患者の終末期のデータが、死の臨床に生かされていないのか。
なぜ、矛盾だらけの医療制度を誰も変えようとしないのか。
医療とは、いったい誰のためのものなのか」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
171
透析に対して何の知識も関心もないが、堀川惠子さんの最新刊なら読まない手はない。そして、その内容の深刻さに打ちのめされる。最愛の夫が、血液透析、腎移植、再透析を経て、透析を止める決断をする10年間に寄り添った経緯を語る前半で、あの知的で冷静な著者が、これほどまでに心を抉られ翻弄された透析医療の現実に胸を締め付けられる。特に、終末期の透析患者をめぐる問題の深刻さを思い知る。「ノンフィクション作家として自分のことを書き始めたらおしまいと思っている」と語っていた堀川さんが意を決して世に問うたこの本の意味は、重い。2025/03/23
まーくん
166
現在、日本では約35万人が透析を受けているそうである。私の周囲にも、中学時代からの友人、現役時代の同僚など、もっと身近では先年亡くなった妹も透析を受けていた。そんなわけで、透析の大変さについても知っていたつもりであったが…。著者の夫は二人が知り合った時、既に透析を受けていたが周囲の反対を押し切り結婚。夫のその後の透析による困難に共に立ち向かうことになる。いろいろな経緯を経て遂に透析治療を受けることが出来なくなる時を迎える。その後に生じる激しい苦痛に対する患者への体制が日本では全く出来ていないという。⇒2025/02/12
アキ
105
日本で腎不全により維持透析を受けている患者は34万人を超えている。透析を始めたら、必ず終わりが来る。しかし、血液透析の場合、医療機関に入院するか通院するしかなく、いつまで透析を続けるのか、透析を終えたら緩和ケアも適応にならず、個々の医師の判断に委ねられている。著者は難病で透析をしつつNHKで働いていた夫の苦しみ抜いた最期を看取り、第一部でその実体験を、第二部で透析医療の終末期についての取材を紹介している。自身が体験した際に選択肢さえ示されなかった腹膜透析の自宅での穏やかな死を知る。医療界への問題提起の書。2025/04/13
kaoru
100
ノンフィクション作家の著者の夫はNHKのディレクター。腎臓の難病のため透析が欠かせない身体だったが透析を止めることを決意し大きな苦痛に満ちた最期を迎えた。配偶者への愛と医療者の間で板挟みとなった著者は透析患者の終末期や腎不全患者の緩和ケアが問題とされていない現実に憤り、腹膜透析を導入する医師や患者を取材し、透析患者の生と死が尊厳に満ちたものとなることを願い本著を顕した。前半の厳しい闘病記は読むのが辛いが夫婦愛の記録として貴重なものだ。ビジネスが優先する医療の問題点や志ある医療者との出会いが患者の人生を→2025/03/01
どんぐり
96
腎不全の患者が透析を止めるとどうなるのか。患者は尿毒症になり数日から2週間前後で亡くなる。そういう状態に至った夫を看取ったノンフィクション作家の記録である。第1部がその記録で、血液透析後に腎移植を受け、数年の安定期の後に再透析、終末期を迎える。その病みの軌跡が壮絶だ。第2部が透析医療をめぐる問題の深掘り。緩和医療、緩和ケアが世間では認知されているにもかかわらず、透析患者には手が届いていない。シャントから透析がまわせなくなると、どのように対処したらいいのか、終末期をどこでどう過ごせばいいのか。→2025/04/01
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