内容説明
◆百句シリーズ
名句が気軽に読める百句シリーズに田中裕明が登場!
◆言葉の生れるところ
田中裕明は、一九五九年大阪に生れた。府立北野高校在学中に高校生の短詩型同人誌「獏」に参加、ついで波多野爽波主宰の「青」に入会する。爽波は高浜虚子の最晩年の直弟子で、徹底した客観写生を唱えた人だ。
京都大学工学部在学中、墨書コピーによる十部限定の私家版で出したのが第一句集『山信』(一九七九)。同年「青」新人賞も受けているが、この句集は気後れゆえか師に手渡すことができず、宴席で隙を見て爽波の鞄に忍ばせたという。
技術者として働き、また俳句をつくるというのは試行錯誤によって世界の本質的な姿に触れるという点で一貫性のある生涯だった。
裕明は生活空間にたえず古典世界への通路を垣間見た。それは身の回りの人々を、言葉を介して古典へ昇華するという顕彰の形でもある。
言葉の人であったけれども、世界の真理を究めようとする人であったけれども。裕明は、言葉は思考のみからなるのではなくて、実人生や身辺のくさぐさのことによって生れるものなのだということを、人生を進めるにつれて実感した詩人でもあったのではないか。
(解説より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
pirokichi
18
2024年8月発行。見開き右側に田中裕明の一句があり、左側に岩田奎さんによる鑑賞が掲載されている。ネットを通じ本書の企画を知った時から、若い著者が田中裕明の句をどう鑑賞するのか楽しみにしていたので、自分なりの解釈鑑賞もしながら、一句一句わくわくして読み進めた。本書は俳人でなく初学者や鑑賞力をつけたい人に向けても書かれているらしいのだが、自分自身鑑賞が苦手なので、ほぉーこう読むのか、こう書けばよいのかと勉強になった。解釈が自分と違う句はそれはそれで新鮮。カバー画はきっと「海亀の涙もろきは我かと思ふ」より。2024/10/18
アキ
3
岩田奎の評がとてもいい。言葉の繋がり、音やリズム、平仮名表記か片仮名表記か、季語がどう効いているか、等様々な角度から語られていて、田中裕明の句の魅力が存分に伝わってきた。特に「寒卵しづかに雲と雲はなれ」「風呂敷につつむ額縁鳥の恋」「おほぜいできてしづかなり土用波」の評はとても面白かった。全句集を読み直したい。2024/09/10
デコボコ
0
◯2025/08/11
ぬう
0
岩田奎が書いていたので図書館で借りた。 良! このシリーズたくさん読みたい。2024/12/01