派遣者たち

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派遣者たち

  • ISBN:9784152103758

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内容説明

地下都市に暮らすテリンは、もはや人が住めなくなった地上へ行くことを切望していた。師匠のイゼフが地上の素晴らしい夕焼けの美しさや夜空を横切る星の輝きを教えたから。だがタリンは地上へ行ける“派遣者”になるための試験の直前、不思議な幻聴を体験する。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

117
地表は氾濫体と呼ばれる菌類に支配され人類は地下都市に逃れたが、禁忌とされた外の世界へ出たヒロインは驚愕の真実を発見する。ヒュー・ハウイー『ウール』と同じ設定だが、キム・チョヨプは単純な終末SFにはしない。氾濫体との接触と人類支配層の思惑を描くことで、異なる知的生命体の進化という『幼年期の終り』的テーマへ進む。氾濫体はカレルレンの如き超越した存在ではなく、地上を取り戻す戦争を図る人類側の動きはパレスチナやウクライナに通じる。そこをヒロイン個人が両者の共存を仲介する結末は、政治ではなく良心に希望を託すようだ。2025/01/01

あおでん@やさどく管理人

19
主人公・テリンの置かれる状況は、今まで読んだ著者の作品の中では一番シビアなのではないか。他者と共に生きるのは難しい。特に相手が我々の理解を超える存在であればなおさら。それでも、諦めずに理解しようと努めることで、通じ合えたと思う瞬間はいつか来る。それをSFという形で描き続けているのは、これまでの作品とも通底している。2024/11/09

おだまん

12
ディストピア的ですがテーマがかなり好み。作者さんのどの作品もそうなんだけど、これも本当に優しさに包まれていて作品の世界観にどっぷりと浸かる幸せ。2024/11/24

イツキ

8
菌類のような知的生命体に地上が支配された未来のSF。人類がいなくなった地上の異形ながらも美しく感じられる風景が印象的。また思考形態から死生観まで異なる存在と折り合いをつけることの難しさや新しい人類の形態などどれも非常に興味深く感じられました。2024/12/27

女神の巡礼者

5
やっぱりキム・チョヨプさんは、素晴らしいSF作家だと実感しました。物語は宇宙から飛来した「氾濫体」と命名された菌類のような生命体によって、地上が覆われてしまった遠未来の地球。ディストピア小説ですが、ひとりの少女の成長の物語として希望の物語でもあり、全く異なる知性と意識を持つ生命体とのファーストコンタクトの、とても刺激的で創造的な物語でもあります。これは今年の海外篇ベストSFだと思ったら、発刊が11月。ということは来年の集計か。2025年に本書を越える海外SFが訳出されるのか。そうあって欲しですけどね。2024/12/28

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