内容説明
■齋藤陽道「この本と、新澤さんのこと」
私たちは、いつ、どのように崩れるかわからない、やわらかくて繊細な弱さを含んだ砂の家なのだ。
砂の家をめぐって厳しい現実を見つめる新澤さん。崩れる砂をともに掬い集め、ともに直し、コツコツと関係を築いていく。
不意に訪れた悲しき日もごまかさず描く。
それでも日常はやってくる。
何気ない日常のかけがえなさを深く噛み締めた人にしか表せない描写によって、登場するみんながふしぎなほど近しくなる。
そうして、自分自身の抱える弱さをも愛でたくなる。
■「あとがき」より
わかるとか理解という言葉はどこか、相手を支配し、取り込むような気持ちの悪さがある。
わかる/わからないを置いておいて、ただ、話を聞いたり一緒に居たりすることしかできない時間が私の日常のほとんどであって、この本のなかで書いてみたかったのは、そういう時間のことだったのだ。
目次
プロローグ――ハーモニーへ
1 はじまり
(1)哲也さんのギター
(2)香風荘
(3)私の居る場所
2 転機
(4)幻聴妄想かるた
(5)幻聴妄想かるた その二
3 ハーモニーの日々
(6)余生とアップルパイ
(7)良太さんと煙草屋の夫婦
(8)Mr.チャーリー☆スター
(9)水平の虹
(10)失踪の心得
(11)大きな地震のあとで
4 家族の風景
(12)進さんの乾電池
(13)私のお墓のまえで
(14)母の名前を書く
(15)父たちと戦争
エピローグ――長島愛生園にて