内容説明
東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会は一年の延期を経て、2021年7月から開催された。東京にコロナ禍による緊急事態宣言が発令されたさなか、無観客で実施され多くの賛否を巻き起こしたが、東京大会の正負両面のレガシー(遺産)はいまだ正面から検証されたとはいいがたい。
招致から準備、開催に至るまで私たちは東京大会というメガイベントとどのように向き合ったのか。オリパラの現代的な構造や役割、それへの賛否という基本的な知識や情報を押さえたうえで、大会の理念、政治やインフラ、都市、競技場、ボランティア、ホストタウン、新しい競技の採用などの個別具体的な事例を丁寧に検証する。
そのうえで、ジェンダーやLGBTQ+、教育などの社会的な価値観の変容にも注目して、東京大会がスポーツ界や日本社会に与えた影響を真正面から多角的に分析する。
目次
序 章 東京大会は何を生んだのか 石坂友司
1 東京大会の目的とビジョン
2 六四年大会の成功神話
3 開催決定の歓喜
4 混乱の大会へ
5 コロナ禍の大会
6 東京大会が生んだ遺産とは何か
第1部 メガイベントとしてのオリンピック
第1章 東京大会開催の経緯と構造的な諸問題 石坂友司
1 オリンピック招致が決まるまで
2 招致決定から開催までの混乱
3 オリンピックの構造的特徴
4 経費問題
第2章 メガイベント(活用)が生み出す課題と可能性 小澤考人
1 イベントを捉える視点
2 オリンピックの誕生と発展
3 メガイベント化の要因と背景
4 メガイベント化によって生じる課題や問題
5 二十一世紀のメガイベントとその動向――都市再生への戦略的活用
6 持続可能性への対応――メガイベントのレガシー(legacy)
7 メガイベント活用の合理性と正当性――開催の「大義」をめぐって
第3章 「記憶と評価」からみた東京大会 石坂友司/松林秀樹/小澤考人
1 大会への賛否
2 大会の記憶と観戦・参加実態
3 大会開催をめぐる評価
第4章 「政治的レガシー」を考える 丸山真央
1 政治的レガシーとは何か
2 政治家たちの東京大会
3 オリパラ政治家に対する都民の評価
第5章 イベント・インフラのネットワーク的基盤と都市経済再編――東京大会の場合 町村敬志
1 イベント・インフラの構築とそのガバナンス
2 各種組織を通じた専門知・利害の連結
3 オリンピックを支える「イベント産業複合体」の存在――「契約関係」を読み解く
第2部 スタジアムと都市
第6章 東京大会の開催で、観光分野はどうなったのか 小澤考人
1 二十一世紀の「観光立国」政策――インバウンド振興の加速
2 都市再生の側面――国際観光都市TOKYOとソフトなリノベーション
3 六四年大会の文脈との対比――観光分野をめぐる近代/現代の転回
4 対外的な視点からみた東京大会の影響
第7章 新競技場の建設と後利用の課題 石坂友司
1 メガイベントのための競技場
2 新設競技場群
3 新国立競技場の建設と運営
第8章 仮設競技会場は、東京という街にふさわしかったのか 山ザキ一也
1 近年のオリンピック開催での競技会場の位置づけ
2 東京大会の競技会場と敷地周辺環境について
3 開放型会場だけが競技中継に都市景観を映し出せる
第9章 開催都市のバリアフリー――変容するバリアフリー概念 山崎貴史
1 バリアフリー施策とオリパラ
2 東京大会に向けたバリアフリーの実際
3 オリパラとバリアフリー概念の変容
第3部 ソフトレガシー
第10章 東京大会の「ボランティアレガシー」は残るのか 金子史弥
1 東京大会に向けたボランティアのリクルート・育成
2 東京大会のボランティアをめぐる「物語」
3 東京大会の「ボランティアレガシー」は残るのか
第11章 開催地域が生み出した遺産――世田谷区のホストタウン事業と「うままち」の取り組み 石坂友司
1 ホストタウン事業
2 世田谷区のホストタウン事業
3 大会を契機としたまちづくり
ほか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Go Extreme
-
- 電子書籍
- 私刑執行人~殺人弁護士とテミスの天秤~…
-
- 電子書籍
- しっかり入門・計量経済学---回帰分析…