内容説明
虚空に詩を捧げる/形ないものにひそむ/原初よりの力を信じて(「詩の捧げ物」)。弱冠18歳でのデビューから70余年。谷川俊太郎の詩は、私たちの傍らで歌い、囁き、描き、そしてただ在り続けた。第一詩集『二十億光年の孤独』以来、第一線で活躍する谷川がくりかえし言葉にしてきた、誕生と死。若さと老い。忘却の快感。そして、この世界の手触り。長い道のりを経て結実した、珠玉の31篇を収録。(解説・斉藤壮馬)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
42
今年の1冊目は、谷川さんの詩集にしました。長く生きて色々な詩を書いた詩人ですが、言葉とは何かという問いかけを詩の中で行うことがよくありました。本書の中にも、そんな詩がいくつかあります。例えば、「何も」では静けさにくらべて言葉は武骨なものとあります。言葉以上に大切なものがあることは確かだし、言葉では表現できない美しさもあります。でも、言葉なしでは人間は生きていけないジレンマがあります。谷川さんはそのジレンマを意識しながら、詩という言葉で何かを全力で伝えようとした詩人でした。その純粋な熱意に胸が熱くなります。2025/01/01
小太郎
31
谷川さんは詩は不思議です。自分にとっては何気に読んでいてその時にはそんなに感じないけれど、あとからジワジワと効いてくる漢方薬のような感じです。詩の感想ってなかなか上手く書けないけれど。詩って自分の心の端っこに引っかかるようなのが後まで残るし、谷川さんの詩はそういうものが多いなあと改めて感じました。もう読めなくなるのはとても寂しい。★42024/12/13
kirinsantoasobo
19
谷川さんの詩は静かに囁かれるように紡がれていくようで、読んでいると心が落ち着いて雑念が消えていきます。幼い子の穏やかな時間が流れる傍らで争いや破壊などの嘆きの声が聞こえてくるなど、切なさを感じる詩に心が痛みます。同時に、世界中の子供たちが自然豊かな土地で無邪気に笑いながら走り回っている姿が浮かんできました。詩はじっくり考える時間をわたしに与えてくれます。谷川さんの残してくださった言葉にこれからも触れ続けていきたいです。2024/12/25
紫羊
17
著者が米寿の年に刊行されたから「ベージュ」=米寿とのこと。でも、収録された詩から受ける印象もベージュっぽかった。宇宙線が飛び交うような往年の作品とは違う味わい。それはそれで谷川俊太郎の世界だった。もう新しい詩集が編まれないのが淋しい。2025/08/20
家出猫
13
俵万智さんが書かれた新書のラストで、谷川さんについての言及があったことを思い出してこの本を手に取った。谷川さんは、言葉そのものを疑い抜いた詩人であると。今回読んだ作品からも、ひしひしとその想いが伝わってきた。谷川さんが亡くなってから1年が過ぎたが亡くなってもなお、言葉を通してその人を捉えられるというのは、素晴らしいと思う。自身は、語学学習が趣味なのだが言語を学習する理由に、一言語で埋められない穴を埋めたいという気持ちがある。言葉と常に向き合い、未だ見えない世界を見てみたいのだ。谷川さんは見えたのだろうか。2025/12/03
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