内容説明
「騎士の十戒」の出典として知られる幻の名著を初邦訳。騎士の起源、規範、叙任の実態が明らかに。騎士道の法典、R.リュイ「騎士道の書」収録。「武勲詩要覧」付録
編訳者緒言
第一部 騎士道 ―― 叙事詩から読み解く一一・一二世紀の騎士道
レオン・ゴーティエ『騎士道(La Chevalerie)』(1884年)より
第一章 騎士道の起源
第二章 騎士の十戒
第三章 騎士道の退廃
第四章 騎士の叙任
第二部 騎士道の書 ―― 騎士による、騎士のための一三世紀騎士必携
ラモン・リュイ『騎士道の書(Llibre de L’Orde de Cavalleria)』(1275年頃)全訳
武勲詩要覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ようはん
11
西洋中世史に関しては騎士道の詳細や武勲詩、シャルルマーニュ辺りの時期はあまり知らなかったので新鮮な知識が数多く得られた。作中で取り上げられてた武勲詩の大まかなストーリーも纏められていてこれを読むだけでも面白かった。2020/06/03
植岡藍
6
ローランの歌をこよなく愛する筆者による騎士道の本。アーサー王に描かれる騎士の姿を軟弱と言い、ローランの歌を讃える。分析や論考というよりは筆者の情熱と主観性を楽しむ本。中世ファンタジー作品を楽しむ副読本として有用。フランスの武勲詩要覧なども楽しい。装丁が美しい。2020/08/15
jackbdc
5
武士道と騎士道の共通点と相違点を整理しつつ通読。共通点:暴力行使の美化を背景とした社会規範の具現化。暴力が社会の安定に寄与する時代において暴力行使を担う人々の存在が不可欠であった。支配者(権力の維持)・兵隊(尊厳の確保)双方の思惑により、暴力行使と社会規範を結び付けて形式化することにより、暴力の負の側面を減じて、暴力行使の美化を浸透させる効果を育てたのが武士道騎士道であった。時代性の変化により暴力の必要性が薄れると共に廃れていくのは必然であった。相違点:自己犠牲に対する価値感の差異等が反映されている。2021/04/24
Oltmk
3
シャルルマーニュや十字軍、ジャンヌ・ダルクといったフランスの英雄達にナショナリズムが投影されていたり、アーサー王伝説の発展による騎士道ロマンス以前の原ゲルマン的騎士道を手本としたり、「ドン・キホーテ」の作者であるセルバンテスを手本となる騎士の一人とするなど、ゴーティエの偏見による騎士道観が面白い。第二部の騎士道の書や訳者解説を読めばヨーロッパにおける時代ごとの騎士道観を学べる事は出来るためゴーティエの第一部以降もきちんと読むことをお勧めしたい。2020/03/18
帽子を編みます
2
これは『騎士道』『騎士道の書』、及び「武勲詩要覧」が付録となった一冊です。 迫力のある銅版画、木版画の挿画が多数あり騎士、天使など参考になります。 『騎士道』は、11,12世紀の騎士道についての本ですが、フランスへの愛国心、キリスト教的武勇が熱い文章で語られます。しかし、作者が残虐な騎士としてラウル・ド・カンブレーについてしつこく述べるので私には、彼の印象しか残りませんでした。 『騎士道の書』は、神学者が書いているせいもあって、キリスト教の僕としての騎士が延べられていて冗長に感じられました。2020/03/19