内容説明
傑作『日本文学盛衰史』に先立ち一九九六年に連載され、五年間の熟成期間を経て二一世紀最初の年末に単行本が刊行された『ゴヂラ』――。
二〇世紀末の西武池袋線石神井公園駅付近の一見平凡な住人たちが同時多発的に異様な状況に巻き込まれてしまう。
これは局所的ではなく、世界全体に同時多発的に起きている異変なのだ。
夏目漱石と森鴎外が結託して悪事を教唆し、詩人は石神井の町から出られなくない、火星人が石神井に襲来する……
あまりに逸脱した展開に、「作者からのお知らせ」までもが入りこむ。
そして、はたしてゴヂラは現れるのか?
世紀をまたいで書き上げられた怪作、初めての文庫化。
目次
序章 幸福の黄色いハンカチ
第一章 お掃除する人
第二章 日本のポルノ
第三章 漂流教室
第四章 ボスは森高
第五章 長崎は今日も雨だった
第六章 銃より他に神はなし
第七章 火星人襲来
第八章 朝日のようにさわやかに
作者からのお知らせ
第九章 ぬいぐるみ戦争
終章 ゴヂラ
著者から読者へ
解説
年譜
著書目録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hasegawa noboru
18
例によっておふざけが過ぎた、少々お下品で、よく言えばフットワーク軽い、ブットンダ小説ですねで済ませたくなる、が、それだけか?コイズミ、クリントン、ヒラリー夫人、ブッシュ、パウエル国防長官等の固有名がこの小説に顔を出すが、それらの頃と比べて、今世界のニュースで毎日のように見聞きする例えばトランプという政治家の事象、言動がおふざけに過ぎた醜悪さに充ち充ちていないと言えるかどうか。しかも彼、彼らは、選挙によって支持されて熱狂をもって迎えられているという現実が、世界の方々である。<世界の秘密><世界ってのは、おれ2025/02/19
ちぇけら
8
昨日と今日は同じ世界である。時計が0時を指したとたん、世界がまっさらに生まれ変わるわけではない。賞味期限が切れた牛乳が、とたんに真っ黒になってしまわないように。ぼくの家の近くには青梅街道があって、ずんずん歩いていけば新宿まで辿り着く。でもここは新宿ではなくて、中野も高円寺も過ぎてゆく。ぼくはもう気づいてしまうかもしれない。このあまりによくできた世界のからくりに。『ゴヂラ』が牛耳る世界の仕組みに。ここは〈石神井公園〉なのだ、ということに。鴎外も火星人も悪も正義も、〈石神井公園〉には〈ある〉し〈ない〉のだ。2025/01/29
明石です
3
文学王がまた新たな書物(初刊行は2001年)を上梓なされたな、、面白すぎて一日で読了。 忘れられた過去の傑作が、この講談社芸術文庫によって発掘され、王のベストが更新されていく快感ったらたまらない。こんなところに書いても届かないとは思うけど、『さよならクリストファー·ロビン』もいつかこの文庫に加わってほしい。2025/04/29
いのふみ
2
なんだこの楽しいが、はちゃめちゃな小説は。西暦2000年前後のディティールが冴え渡っている。年代と合っているのはもちろん、チョイスが絶妙。高橋さんはデビュー以来ずっとポップで、前衛だったのだなぁ。2025/01/06